研究課題
液体中の微粒子を計測するために光学的手法をはじめとした様々な方法が用いられているが、粒子の濃度が著しく高いと定量測定が困難な場合が多い。凝集体の有無は、電池材料やナノ積層された電子材料などで重要な検討課題であり、特に希釈すると微量凝集体の発見が困難になり、弱い構造は壊れてしまうため、無希釈で測定する方法が望まれている。本研究では、電池・化粧品・塗料産業における濃厚系微粒子の分散評価に有用な超音波法を開発し、 (i)微量凝集体を含むマルチスケールの粒径解析、(ii) 超音波が力を伝える波であることに着目した「凝集体の」硬さ解析、および(iii) 音響や電場という外場の刺激による濃厚系ナノ粒子の凝集・分散状態の識別が行える新手法の開発を目的とした。胎児のエコー診断に活用される波長の長いメガヘルツ超音波(水中で50 μm)は、ナノ粒子のブラウン運動の検出には不向きであると考えられてきたが、我々はこの常識をくつがえし、高速・高精度なナノ粒子計測を実現した。一方、運動が完全に凍結する粒子の最密充填付近の濃度になると、極度な超音波の減衰とビーム強度不足が懸念される。また、複雑な粒子間相互作用によって、信号の記録は行えても、運動状態から粒径情報への変換が困難となる。本研究では、効率の良い超音波発信と高感度受信(電気-力学エネルギー変換)、解析システムを発展させ、濃度30wt%のナノ・サブミクロン粒子の解析を実現した。濃度50wt%もの濃度の高い微粒子懸濁液試料に対して、沈降を伴うような試料でも正しく評価できる電気泳動動的超音波散乱法の基礎システムを構築した。また、水中に分散する1個の粒子の硬さを非接触で評価する技術を構築し、ガラス転移温度の異なる種々の高分子微粒子やナノエマルションに対して定量的評価を実現した。これらはすべて査読制の英文誌に論文発表した。
2: おおむね順調に進展している
R5年度の計画として、ナノ粒子の濃厚懸濁液に適応可能な動的超音波散乱(Nano-DSS)システムの開発を掲げていた。Nano-DSSを構築し、半径15nmから250nmの粒子に対して特性解析を実施した。特に濃度30wt%の高い濃度で測定が行えるだけでなく、粒子間相互作用が顕著な状態で正しい粒子径を評価する方法を確立した。その結果を査読制英文誌に発表した。数値目標として掲げているさらに濃度の高い試料の解析や、さらに高出力な超音波システムの開発も進めているが、この成果はまだ未発表である。
議論を明快にするため今年度の研究では比較的単分散の試料を取り扱った。一方で、粒子径に分布がある試料の濃度を著しく増加させると粒子径解析が困難になる。これは光学的手法も、超音波法も同様である。しかし、粒子の大きさと比べて波長の長い超音波の特性を活かし、今後はこの問題についても取り組んでいく。
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Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects
巻: 690 ページ: 133807~133807
10.1016/j.colsurfa.2024.133807
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Japanese Journal of Applied Physics
巻: 63 ページ: 03SP37~03SP37
10.35848/1347-4065/ad22bb
巻: 63 ページ: 02SP84~02SP84
10.35848/1347-4065/ad1e06