研究実績の概要 |
反復学習制御は,半導体露光装置などの精密制御が必要な応用先において重要な制御法である。この制御法は,過去の位置決め誤差の情報を用いて繰り返し試行を行うことで,センサの分解能レベルの位置決め精度を達することができる特長がある一方で,タスク汎化性能がないため,一般工作機械,産業用ロボット,搬送装置,などにはあまり用いられていない。本研究では,目標軌道に対して非因果的制御入力を発生させる新しい学習制御則を提案し,前述の課題を緩和・克服する制御理論の構築と,実データからの制御器パラメタ設計手法を構築を目指すことが目的である。 本年は,特に Kentaro Tsurumoto, Wataru Ohnishi, Takafumi Koseki: Task Flexible and High Performance ILC: Preliminary Analysis of Combining a Basis Function and Frequency Domain Design Approach, 22nd IFAC World Congress, pp. 2057-2062, 2023. において,特定タスクに対して高性能を達成する周波数領域ILCと,速度・加速度目標値という多項式の基底関数を組み合わせたILCを提案した。数値シミュレーションにより,タスク変化前の追従誤差の収束値で周波数領域ILCを凌駕し,さらにタスク柔軟性では基底関数ILCと同等となり,トレードオフを回避できることを示した。今後は,実験検証および,基底関数を有理関数に拡張し,非因果的制御入力を積極的に活用する枠組みを構築する。
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