研究課題/領域番号 |
23H01483
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松田 浩 長崎大学, 工学研究科, 特任研究員 (20157324)
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研究分担者 |
出水 享 長崎大学, 工学研究科, 技術職員 (00533308)
森 伸一郎 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 寄附講座教授 (10304643)
中畑 和之 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (20380256)
佐々木 謙二 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (20575394)
島崎 航平 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (20867303)
奥松 俊博 長崎大学, 工学研究科, 教授 (30346928)
石井 抱 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (40282686)
西川 貴文 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (50512076)
古賀 掲維 長崎大学, ICT基盤センター, 准教授 (60284709)
山口 浩平 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (60336013)
山口 栄輝 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (90200609)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 不変構造特徴量 / 橋梁点検診断システム / AI損傷検知システム / インフラ維持管理DB / 4K高速度カメラ / たわみ時刻歴応答値の変化率 |
研究実績の概要 |
中小スパン橋梁を対象として4K高速度カメラを用いた簡易で効率的な点検診断システムを開発するとともに、物体検出AIやDBシステム等のICT技術の活用による総合的維持管理手法の開発を行った。 (1)[中小スパン橋梁の点検・診断システム] 1)4K高速度カメラを使用して動的変位計測システム開発、2)走行荷重を受ける橋梁のフーリエ級数解、3次元有限要素法(3DFEM)及び振動計測実験による動的応答、3)損傷有無梁の変位時刻歴応答の相対差により損傷の有無・位置の同定、4)はり載荷・振動試験と3DFEM解析結果の比較、5)中小橋梁に対する「長時間高速ビデオ画像を用いた全視野見える化解析」の試行試験、たわみ分布、変位、周波数解析、交通流計測、計測精度と使用性を検証、6)全視野振動見える化リアルタイムモニタリングを可能とするソフトウェア開発、複数地点の中小橋梁に対するリモートリアルタムモニタリング試験を実施した。 (2)[AI損傷検知システムとインフラ維持管理DB] 1)ひび割れ等の劣化項目の物体検出AIを構築しAIによる損傷検出を確認、2)AI-iPadアプリを作成し現場損傷検出を可能、3)インフラ維持管理DBのRES-APIを用いて外部プログラムから橋梁損傷検出結果を登録可能、4)iPadアプリから損傷検出結果を登録可能。iPadを用いた損傷検出の流れは(位置情報取得→DBから橋梁調査→写真撮影→AI損傷検出→画像アップロード→インフラ維持管理DB)、5)RC桁を対象としてGoPro 3台を用いた撮影装置を開発し、SfM/MVS技術による3D橋梁モデル上で損傷の位置や寸法を検証し、近接目視と同等以上の点検が可能であることを確認。360度カメラを用いた計測によりさらに短時間に計測できることを確認するとともに、360度画像にAIを適用する手法についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)[中小スパン橋梁の点検・診断システム] 梁の静的解析において剛性変化前後のたわみ影響線変化率曲線が剛性変化位置で大きくなること、実験でも計測可能であることを確認した。また、走行荷重による時刻歴たわみ応答値変化率を解析した結果、損傷位置で不連続点を見出した。荷重と速度に依存しない無次元時刻歴たわみ応答値の変化率の不連続点を確認でき、構造異常検出が可能であることを再確認した。 実橋梁(支間長26.1m の2径間単純活荷重合成鋼桁橋)を対象とした長時間の高速ビデオ画像を用いた振動見える化解析の結果から、大型車両通過時に数mmのたわみ変位や周波数スペクトルにおける共振周波数だけでなく、見かけの歪分布が計測可能であることを確認した。画面内の橋梁に対して非接触で約70個の変位センサの変位分布の同時計測が可能であった。また、周波数スペクトルを計算して橋梁の共振周波数(面内鉛直3.01Hz)を算定した。また、橋梁の変位や振動がリアルタイムで確認でき、交通規制なしで長時間かつリアルタイムに振動可視化を実現した。 (2)[AI損傷検知システムとインフラ維持管理DB] ひび割れ、剥離・鉄筋露出、漏水、遊離石灰を物体検出モデルを用いて、損傷検出AIを開発した。また、カメラ3台による橋梁3D点群データを作成し、劣化情報を付与することによりバーチャル点検診断を可能とした。写真データに対して損傷箇所および種類を指定し、AI教師用データを作成し物体検出AIを構築し上記の欠陥を自動検出できることを確認した。DBについてはPRISM事業で長崎市、五島市、新上五島町の協力の下にプロトタイプを開発していたので、それを利用し以下①~④の機能をインフラ維持管理DBにAPIとして実装し、タブレット型アプリと連携させた。①位置情報からの橋梁検索、②橋梁情報の取得、③計測(撮影)情報の登録、④推論結果の登録。
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今後の研究の推進方策 |
(1)本技術開発による、長時間の高速ビデオ画像を用いた振動見える化解析の結果から、大型車両通過時に数mmのたわみ変位や周波数スペクトルにおける共振周波数だけでなく、見かけの歪分布が計測可能であることをほかの橋梁についても、橋梁の変位や振動がリアルタイムで取得でき、交通規制なしで長時間かつリアルタイムに振動可視化を確認する。
(2)地方橋梁のデジタルツイン型橋梁維持管理プラットフォームの構築が進むことが期待され、特にモデルと連携した3D橋梁モニタリングやリモート道守と連動した橋梁デジタルツインが挙げられる。この技術は、行政機関等が持つインフラデータベース・管理プラットフォームとリンクし、点検・補修履歴情報などと連動し、橋梁点検・維持管理の技術者や予算不足が深刻な地方自治体にとって有効な技術として、持ち運び・設置が容易な新技術により、橋梁の維持管理が効率化され、安全性が向上することが期待される。
(3)さらに、360度カメラによるAI検出+3D形状+劣化情報の取得システムを構築すること、撮影から推論までタブレット用アプリ内で完結した維持管理DBと連携した管理作業の効率化を図るシステムを構築する。また、走行荷重による弾性地盤上の梁・板の解析へ拡張して、道路舗装の劣化診断技術としてたわみ量計測技術である、FWDやMMD技術のプレ診断に相当する技術開発にも着手する。
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