研究課題/領域番号 |
23H01535
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
本多 了 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (40422456)
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研究分担者 |
松浦 哲久 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (90771585)
沈 尚 立命館大学, 理工学部, 講師 (20882426)
西川 洋平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (90867277)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 薬剤耐性 / 細胞外遺伝子 / ファージ / 下水処理 |
研究実績の概要 |
下水処理場で、流入下水、活性汚泥、処理後の放流水から季節ごとにサンプルを採取した,サンプルは細胞内成分と細胞外成分に分画した後、抽出したDNAに対してショットガンメタゲノム配列解析を行った。各画分から得られたメタゲノム配列の薬剤耐性遺伝子(ARG)をCARD v.3.2.6と比較して同定し、各ARGのリード数を集約し正規化して,各試料の細胞内外画分ごとの薬剤耐性遺伝子プロファイルを得た。その結果,結果:流入水から放流水へのeARG(細胞外抗生物質耐性遺伝子)とiARG(細胞内抗生物質耐性遺伝子)の比率は徐々に増加した。、CAS(従来型活性汚泥法)およびMBR(膜生物反応器)プロセスを通じて、16Sバクテリア集団あたりのeARGの豊富さに有意な変化は見られない。流入下水のeARGの構成はiARGに類似しているが、流入水から活性汚泥への顕著な変化が見られた。一方,処理場放流水のeARG構成は、プロセスや季節に関わらず汚泥からの大きな変化はなかった。特に、活性汚泥と放流水のeARG構成は多様性が少なく、アミノグリコシドに関連するARGが支配的であり、春と夏には消毒剤および防腐剤に対する多剤耐性ARGも広く見られた。MBRは標準活性汚泥法と比較してeARGおよびiARGの除去率が高いことがわかった。また,薬剤耐性の宿主となる細菌種を明らかにするためのシングルセルゲノム解析のために,下水処理場由来のサンプルから1細胞ゲノム解析に向けた微生物懸濁液の調製方法を検討した。また、調製した微生物懸濁液を微小液滴内に封入して反応を進めることにより、1細胞からのゲノム増幅が可能であることを確認した。また,琵琶湖・下水処理場・河川のサンプルから細菌およウイルスゲノムを再構築し、両者の薬剤耐性遺伝子プロファイルの差異性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メタゲノム解析による細胞外薬剤耐性遺伝子の下水処理場における動態について概ねデータが得られた。また,シングルセルゲノム解析のための前処理手法の検討についても予定通り完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に確立した前処理手法を用いてシングルセルゲノム解析を行う。具体的には,細胞内画分から灰燼除去と細胞分散を行った後,液滴内での全ゲノム増幅および384ウェルプレートに分取してゲノムライブラリの調製を行う。ライブラリに対して対象遺伝子および16SrRNA遺伝子を対象としたPCRおよびアンプリコンの配列解析を行い,対象となる耐性遺伝子を保有する細菌の系統情報を得る。得られた細菌叢を下水→活性汚泥→二次処理水で比較し,下水処理工程における細胞内薬剤耐性遺伝子のキャリアの変遷を明らかにする。また,細菌・ウイルス内の薬剤耐性遺伝子を詳細に解析し、水平伝播の痕跡を明らかにすることを試みる。遊離DNAの濃縮・精製とシーケンスを実施し、存在形態(細胞内・ウイルス態・遊離態)ごとの薬剤耐性遺伝子プロファイルを明らかにする。
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