研究課題/領域番号 |
23H01540
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
橋本 温 県立広島大学, 生物資源科学部, 教授 (30332068)
|
研究分担者 |
大仲 賢二 麻布大学, 生命・環境科学部, 准教授 (60257293)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | ウェルシュ菌 / 嫌気性芽胞菌 |
研究実績の概要 |
ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)のうち、エンテロトキシン(cpe)を産生する食中毒等の起因菌となる可能性のあるcpe遺伝子保有ウェルシュ菌が下水放流水、河川水、根菜類表面付着土壌から高頻度に分離される事が明らかになっている。本研究は水環境や土壌環境から分離されるこれらのcpe保有ウェルシュ菌の生化学的性状や遺伝子などを調査し、データベースの情報と比較することで、水-土壌-ヒトでのウェルシュ菌の動態を探ることを目的とする。令和5年度は、主に下水流入水および放流水、市販のじゃがいも表面付着土壌から分離したウェルシュ菌株を中心に、菌株の収集と生化学的性状による分類を行った。先行の研究では主にウェルシュ菌の毒素遺伝子を中心に検索と分類を実施してきたが、今年度は生化学的性状試験を中心に行い、ウェルシュ菌を含む広い嫌気性の亜硫酸還元性クロストリジウム属菌の分布について検討した。 生化学的性状試験の結果からは、下水関連では分離された菌株の95%以上がウェルシュ菌(C. perfringens)と分類されたが、じゃがいも付着土壌から分離された者については、分類不能な菌株を含む非ウェルシュ菌の菌株も多く検出された。今後これらの分布及びその比較によってウェルシュ菌を含む嫌気性菌の動態について検討する。 加えて、下水流入水および放流水、じゃがいも付着土壌のウェルシュ菌の菌株を収集、凍結し、今後の遺伝子検索用の試料として保存している。これらの保存試料については、適宜ウェルシュ菌毒素遺伝子、16SrRNA遺伝子等の解析を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子解析用の試料の採取と保存は進んでいるが、効率的な解析を行うために一定数まとまった段階で遺伝子解析を行う予定であるが、当初の計画では遺伝子解析も一部実施の予定であった。従って、当初計画よりは進捗がやや遅れているものの、全体としては問題のないレベルである。
|
今後の研究の推進方策 |
現在進行中である下水流入水/放流水試料およびじゃがいも等の根菜類試料からのウェルシュ菌株の分離収集と保存、生化学的性状による菌種の判別分類を継続する。また、各試料から収集し、凍結保存してある菌株について、ウェルシュ菌毒素遺伝子(cpa、cpeなど)および16SrRNA遺伝子の解析について、効率的にPCR等を実施して実施する。 これらの下水等の試料に加えて、今後は下水等のヒト由来の排水の放流先となる河川水、河川の灌漑による影響を受けている耕作土壌などに拡大し、これらの試料から同様の方法でウェルシュ菌株を分離、収集し、それぞれ生化学性状試験による菌種分類および遺伝子解析を実施する。いずれの試料についても50-100株について生化学的性状試験および遺伝子解析を行い、それぞれの試料における各菌種のの分布を評価すると供に、遺伝子データベースの情報も併せて考察することで、土壌-水環境-水利用システムなどでのウェルシュ菌の動態を探る。
|