研究課題/領域番号 |
23H01541
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
古川 隼士 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (90632729)
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研究分担者 |
上野 崇寿 大分工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (30508867)
前花 祥太郎 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (40803177)
Amarasiri Mohan 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (50815537)
清 和成 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80324177)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | パルス電界 / 薬剤耐性菌 / 薬剤耐性遺伝子 / 消毒 / 下水処理場 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、下水処理場からの薬剤耐性菌(ARB)とその耐性遺伝子(ARGs)排出負荷低減のために、(1)パルス電界(PEF)消毒法を下水処理の最終過程である消毒の新たなオプションとして実用化レベルに引き上げること、および(2)下水処理過程におけるARB・ARGsの包括的な消長を明らかにし、消毒技術に要求される削減率を定量的に理解することである。 (1)について、2023年度は、これまでに得られている知見をもとに、PEF消毒実験装置のプロトタイプの設計・構築を行った。装置は、PEF発生装置とPEF消毒チャンバーで構成されている。PEF発生装置は下水二次処理水の電気的性質を考慮した設計とした。PEF消毒チャンバーは、研究代表者らが出願した電気伝導度が極めて高い(インピーダンス値が極めて低い)液状物に対して高電界の印加が可能な「殺菌チャンバーおよび殺菌処理装置(特願2022-175371)」をベースに、下水二次処理水の連続消毒処理を可能とするチャンバーを構築した。2024年度は、このPEF消毒実験装置を用いて下水二次処理水を対象とした消毒実験を行っていく予定である。 (2)について、2023年度は、合計4回の下水処理場での試料採取を実施した。採取した試料を下水4試料(流入下水、反応タンク水、二次処理水、放流水)および汚泥2試料(最初沈殿池汚泥、最終沈殿池汚泥)とした。各試料について、グラム陽性およびグラム陰性の薬剤耐性菌を選択的に培養可能な培地で培養し、細菌数を計数した。また、各試料から細菌細胞由来、ウイルス由来、および細胞外DNAをそれぞれ分画してから抽出し、-20℃で保存した。これらのDNA試料については、今後ARGsの定量を行う。2024年度も定期的な下水処理場での試料採取を継続し、ARBの細菌数およびARGsの下水処理プロセスにおける消長について明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は実験補助者のリクルートができなかったため、当初予定していたパルス電界(PEF)印加消毒実験がほとんど実施できなかったこと、ならびに下水処理過程における薬剤耐性菌(ARB)およびその耐性遺伝子(ARGs)の存在実態調査、およびそれらの分析の回数が限定されたことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、下水処理場からの薬剤耐性菌(ARB)とその耐性遺伝子(ARGs)排出負荷低減のために、(1)パルス電界(PEF)消毒法を下水処理の最終過程である消毒の新たなオプションとして実用化レベルに引き上げること、および(2)下水処理過程におけるARB・ARGsの包括的な消長を明らかにし、消毒技術に要求される削減率を定量的に理解することである。 (1)について、2023年度に構築したPEF消毒実験装置を用いて、採取してきた下水二次処理水を対象に消毒実験を行っていく。PEF印加条件の変動パラメータは電圧値、周波数、処理時間、およびパルス幅とする予定である。実験の進捗に伴い、検討が必要であると考えられるパラメータがある場合は適宜追加して実験を進める。 (2)について、2023年度から継続している定期的な下水処理場での試料採取を、2024年度は回数を増やして実施する予定である。採取した下水および汚泥試料は、各種ARBの細菌数を測定するとともに、各試料から細菌細胞由来、ウイルス由来、および細胞外由来DNAをそれぞれ分画してから抽出し、そのDNA試料について各種ARGsのコピー数をリアルタイム定量PCRあるいはデジタルPCRを用いて定量する予定である。 (1)および(2)の分析を通じて、PEF印加消毒によるARBおよびARGsの削減効果およびその処理条件の検証、および下水処理プロセスにおけるARBおよびARGsの包括的な消長について明らかにするためのデータ・知見を蓄積していく。
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