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2023 年度 実績報告書

20世紀東アジアにおける集団住宅地に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23H01594
配分区分補助金
研究機関法政大学

研究代表者

高村 雅彦  法政大学, デザイン工学部, 教授 (80343614)

研究分担者 包 慕萍  大和大学, 理工学部, 教授 (40536827)
邵 帥  法政大学, デザイン工学部, 助手 (80971689)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2028-03-31
キーワード集団住宅地 / 東アジア / 中国 / ソウル / 台北
研究実績の概要

本研究は、1950年代以降の東アジアの各都市に形成された<集団住宅地>が研究の対象となる。その理念や計画の詳細、実態に関しての論証はきわめて少ない。この時期の東アジアにおける集団住宅地の展開過程は、日本を含めた北半球の地球規模での広がりの中で相互に影響しながら形成され、とくに戦前から戦間期を経て、戦後に開花した人間の理想的な集住のあり方を目指した貴重な事例といえる。この種の先端的な海外事例の応用だけでなく、各地域ごとの伝統性と植民地による計画の経験、その後の政治体制の影響を分析の視点に加え、中国を軸としつつ20世紀東アジアにおける集団住宅地を包括的に研究することで、国際的な学術研究に寄与し、同時に今後の新たな〈集住モデル〉の提案に資するような基盤研究となることを目標とする。
そこで、2023年度は中国だけでなく、主にソウルと台北を対象に同じ観点から調査研究をおこなった。ソウルでは、1960年代後半から1980年にかけて建築された南山アパート、世運商街、汝矣島アパート、蚕室住公アパート、開浦住公アパート、銀馬アパートを現地調査し、いずれも行列型の棟配置を主としながら、中国と同様に幼稚園や小学校、商店街や市場を配置しつつ、また教会や銭湯が設けらていることが多く、とくに棟間隔に距離を持たせて広大な緑地を計画する特徴を持つことを明らかにした。一方、台北では、1969年から1971年に建築された斯文里三期整宅、剣潭二期整宅、信義路整宅、南机場三期整宅を現地調査し、いずれもアーケードの亭仔脚を備えた街区周辺型の棟配置を主としながら、内部の中庭や廊下に緑を多く設け、とりわけ室配置の一角に廟などの宗教施設を取り込む特徴を持つことを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ソウルと台北については、当初の計画以上に調査研究を進展することができた。その理由として、中国については渡航や調査に関わる環境に制限が生じ、それに代わって研究代表者の高村雅彦を中心にソウルと台北に重点を置く方針に変えたことがあげられる。一方で、戦後の1949年から1960年代前半における新中国建国直後のいわゆる第一次、第二次五カ年計画期に開発された集団住宅地を対象とした調査研究は、研究分担者である包慕萍と邵帥の中国国籍の研究者が主に行うこととなった。具体的には、中国の東北地区(長春第一汽車工場住宅地、瀋陽鉄西労働者新村、大連沙河口住宅地)、華北地区(北京の北京紡績第二工場、復興門外真武廟近隣住区、三里河大街区、百万荘大街区、夕照寺居住小区、幸福村居住小区)、華東地区(上海の曹楊一・二村、閘電新村、呉涇二村)、華南地区(広州の南石頭製紙工場住宅地、員村四横路5号院、番禺窒素肥料工場住宅地)についてそれぞれの地域ごとに分析をおこなうことが目的となる。中国の当時手本とされた旧ソ連を中心とする西欧諸国や日本の計画との比較検討をおこない、それにソウルや台北の主要都市の調査研究を加えて、20世紀中期の東アジアの集団住宅地の思想と意義を導き出す端緒についたことが、おおむね順調に進展しているとする理由である。

今後の研究の推進方策

2024年度は、ソウルと台北、中国各都市の集団住宅地を対象に、詳細な実測調査を実施して、同時に文献資料を収集し、各機関に聞き取り調査をおこなう予定である。また、少し視野を広げてバンコクにおける集団住宅地の予備的な現地調査をおこなう。これは、同時期の集団住宅地の計画や思想が東アジアと東南アジアでいかに共通しているか、あるいは違っているのかを明らかにすることで、東アジアの特性を浮かび上がらせることを目的としている。さらに、今後の研究の対象となりそうな日本国内の事例についても予備的に調査を行う。首都圏(花畑、亀戸、大島、竹ノ塚、金町、立花)、大阪圏(金岡東団地、金岡団地、堀川団地、壬生団地)、名古屋(中根住宅、本星住宅、千種台住宅、中富住宅)が主な対象となるであろう。いずれの対象も、代表者と分担者がそれぞれの担当を中心に調査研究をおこないながら、相互に緊密な連絡や情報の共有を図ることが研究を遂行する上で最も重要な推進方策となる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 上海住宅地計画の変遷からみた地域性の特質 中国第一次五カ年計画期の労働者住宅地計画に関する研究2023

    • 著者名/発表者名
      邵帥,高村雅彦
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 88巻810号 ページ: 2426-2435

    • DOI

      10.3130/aija.88.2426

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Impact of Soviet worker residential area design on Beijing No. 2 textile factory: Research of worker residential planning during the First Five-Year Plan2023

    • 著者名/発表者名
      Shao Shuai, Takamura Masahiko
    • 雑誌名

      JAPAN ARCHITECTURAL REVIEW

      巻: Volume6 ページ: 1-13

    • DOI

      10.1002/2475-8876.12375

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Research on the Impact of Soviet Translations on Residential Planning and Spatial Practice of Superblock in the People's Republic of China in the 1950s2023

    • 著者名/発表者名
      SHAO Shuai
    • 雑誌名

      Architectural Journal, China

      巻: 27 ページ: 180-186

    • 査読あり / 国際共著
  • [図書] 田中優子編、落語がつくる〈江戸東京〉2023

    • 著者名/発表者名
      高村雅彦
    • 総ページ数
      233
    • 出版者
      上海の長屋と滑稽戯
    • ISBN
      978-4-00-025508-0

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公開日: 2024-12-25  

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