研究実績の概要 |
最も激しい燃焼波であるデトネーション波を用いたデトネーションエンジンは、高速燃焼によるシステムの小型高出力化と既存燃焼サイクルで最高の理論熱効率を実現する。本研究グループは、2013年にデトネーションロケットエンジンの飛行試験を成功させ(Matsuoka et al., Journal of Propulsion and Power, 2016)、2021年7月にはJAXA宇宙科学研究所の観測ロケットS-520-31号機を用いて、世界初の宇宙環境下でのデトネーションエンジン作動を成功させた(Goto et al., Journal of Journal of Spacecraft and Rockets, 2021)。しかしながら、非定常燃焼器特有の煩雑さによりデトネーションエンジンの潜在的優位性は実験的に確認されていない。本研究の目的は、燃焼器出口での燃焼ガス全圧が推進剤供給全圧を上回る、圧力ゲイン燃焼を達成することである。 当該年度は、インジェクタ直下流の流路形状を変更し全圧損失を低減させた場合の回転デトネーションエンジン作動および圧力ゲイン性能を実験的に評価した。インジェクタ下流の流路拡大角を6、30、90 degreeと増加させた。90 degreeでは、インジェクタ下流が急激に拡大するため全圧損失が大きい条件である。実験の結果、流路拡大角が減少するとデトネーション波が不安定になる結果を得た。また、拡大角が小さい条件で圧力ゲイン性能も低下する傾向を得た。この結果から、高い圧力ゲインを得るためには、デトネーション波を安定伝播させるためのインジェクタ圧損が重要であることが示唆された(Nakajima et al., Shock Waves, Accepted)。このため、本研究が提案する能動インジェクタによる圧力ゲインが、有効な手段であることが示された。
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