研究課題/領域番号 |
23H01705
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
和田 武 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10431602)
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研究分担者 |
加藤 秀実 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80323096)
奥川 将行 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (70847160)
SONG RUIRUI 東北大学, 金属材料研究所, 特任助教 (20975429)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 金属溶湯脱成分 / ポーラス金属 / 触媒 / 脱合金 |
研究実績の概要 |
(1)二元系前駆合金(前駆合金A-B, 金属浴C)= (Fe-Ni, Bi/Mg), (Mo-Ni, Bi/Mg)の金属溶湯部分脱成分:Fe-Ni前駆合金をBi-Ni溶湯に浸漬した際に生成するリガメント組成とBi-Ni溶湯組成の関係を明らかにして、様々な組成のポーラスFe-Ni合金を作製することに成功した。Mo-Ni前駆合金をBi-Ni溶湯に浸漬する実験では、Mo-Ni二元状態図に存在するすべての金属間化合物(Ni4Mo相、Ni3Mo相、NiMo相)のポーラス金属を得るためのBi-Ni溶湯組成を明らかにし、これを基にして1073KにおけるMo-Ni-Bi状態図のタイラインを検討した。 (2)部分脱成分反応速度・リガメント粗大化速度:Fe-Ni前駆合金をBi-Ni溶湯に浸漬する部分脱成分では、脱成分温度が従来の実験に比べて低いため、熱的な粗大化の影響が小さくなり、リガメントサイズが試料全体で一様になっていることが分かった。またMo-Ni前駆合金をBi-Ni合金に浸漬する部分脱成分では生成するポーラス金属の結晶(Ni4Mo相、Ni3Mo相、Ni7Mo7相)によってリガメントサイズが大きく変化することが分かった。特にNi7Mo7相(μ相)は原子を多数含む緻密で複雑な結晶構造を有するため他の化合物に比べて表面拡散が抑制さると考えられ、同一の脱成分条件で最もリガメントが微細なポーラス金属を生成した。 (3)ポーラスMo-Ni金属間化合物の触媒特性:三種類のポーラスMo-Ni金属間化合物の単位表面積あたりの触媒特性を評価したところ、Ni7Mo7相が最も優れた特性を示すことが分かった。次年度はこの金属間化合物に注目しポーラス構造最適化によって触媒性能向上を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R5年度に予定していた二元系における部分脱成分現象と生成ポーラス金属の形態に及ぼす因子を理解することができた。また、部分脱成分で作製した各種Mo-Niポーラス金属間化合物の触媒性能の基礎的評価も行った。これらの成果を基に、部分脱成分を用いたナノポーラス複雑合金への展開、ポーラス金属の形態制御方法の実験およびコンピューターシミュレーションによる確立、更にはそれを基にしてポーラス金属の組成および形態を水素発生触媒性能の向上に向けて最適化してゆくR6およびR7年の研究計画に必要な基礎データが出そろっており、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
二元系で得られた知見を基にして部分脱成分技術を多元合金に適用してオーステナイト系ステンレス鋼や面心立方構造のハイエントロピー合金のナノポーラス金属作製を目指す。また実験によるリガメント粗大化速度解析とMDシミュレーションを用いた拡散解析によってリガメントの粗大化挙動を解明して、その知見を基にして脱成分条件の適切な選定や元素添加を行うことでナノポーラス体の形態を適切に制御する。触媒特性の評価においては今年度の実験において、3つのMo-Ni金属間化合物の中から、材料としてNi7Mo7相(μ相)が最も触媒特性に優れることが分かったので、次年度はこの材料の形態制御に注力する。リガメントを微細化による比表面積を増大して触媒のレート特性を向上を目指す。また、触媒耐久性に及ぼすリガメントの形状や空隙率の関係を調べ、触媒の長寿命化を目指す。
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