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2023 年度 実績報告書

応力付与変態等を利用した組織制御による伸長高強度パーライト鋼の強靭化

研究課題

研究課題/領域番号 23H01732
配分区分補助金
研究機関国立研究開発法人物質・材料研究機構

研究代表者

上路 林太郎  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究センター, グループリーダー (80380145)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード構造材料 / 鉄鋼 / 相変態 / 残留応力 / 高温変形
研究実績の概要

層状組織は高強度金属材料を実現する工業上重要な組織である、鋼のパーライト組織は本研究の目的は、パーライト鋼に強靭性を与えるための組織設計指針を獲得することにある。当該年度は、素材としては、高炭素鋼でありかつ組織制御の際に球状化が生じにくいCr添加鋼(JIS-SUP12)を用いた研究を行った。本年はラメラ間隔の調整した各種試験片に対して高速引張試験と微小衝撃試験による力学特性評価を行う。ラメラ間隔は、600℃~700℃の等温変態を利用し、40nm程度から150nm程度まで変化させた試料を作製した。既設の熱間加工シミュレーターに設置された40mm長さの試験片に対して熱処理を可能とする誘導加熱コイルを用いて組織制御を実施し力学試験片を採取した。ひずみ速度10の-3乗毎秒から10の2乗毎秒までの各種ひずみ速度にて引張および圧縮試験を行った。その結果、変態温度が低いほど、すなわちラメラ間隔が小さいほど変形抵抗が大きくなる傾向が、いずれの負荷極性・ひずみ速度においてみられた。一方で、活性化体積の逆数に相当するひずみ速度の対数-降伏応力の相関を示す直線の傾きは、ラメラ間隔によらず一定であることが明らかとなった。さらに、広範なひずみ速度範囲において、引張の降伏応力よりも圧縮の降伏応力が小さくなる力学的異方性が認められた。靭性は微小衝撃試験機(1~1.5mm角×20mm試験片)により評価した。特に、微小衝撃試験については、荷重変動の小さなデータを得るための撃針形状や試験片形状の検討を行ない、600℃近傍でも衝撃試験が可能な測定系を構築した。加えて、溝ロール加工等により得た伸長パーライト鋼の降伏応力の異方性についても測定を行い、フェライト内の残留応力との相関を踏まえた異方性発現メカニズムについて検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定した研究内容はすべて実施できた。特に溝ロール加工により得た伸長パーライト組織を有する棒鋼の降伏応力異方性に関する知見を検討したことにより、パーライトの変形や靭性を検討する上で残留応力の存在を無視できないことを見出すことができた。

今後の研究の推進方策

昨年度用いたものと同じばね鋼(SUP12)を用いて研究を進める。熱処理ままのパーライトについては、昨年度に引き続きてラメラ間隔と強度の関係を種々の変形条件で測定を積み重ねてゆく。加えて、変態前のオーステナイト化条件を変えた試験片を準備し、旧オーステナイト粒の形状と強度・靭性の関係を引張試験および微小衝撃試験により明らかにする。微小衝撃試験を用いた検討については、その試験方法の特性を検討するためにパーライトのみならず焼戻マルテンサイトやベイナイトといったSUP12で得られる他の組織についても、試験片サイズ依存性に注目したデータ収集を行い成果発信を行う。加えて、溝ロール加工材を用いて降伏強度の異方性の起源を検討するために、多軸応力状態における塑性変形における移動硬化則に基づく検討を内部応力との相関を念頭に検討する。この検討より、パーライト内部の残留応力の詳細を明らかにし、強度や靭性と組織の相関を考えるための基盤を構築する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Deformation-induced Martensitic Transformation at Tensile and Compressive Deformations of Bainitic Steels with Different Carbon Contents2024

    • 著者名/発表者名
      Ueji Rintaro、Gong Wu、Harjo Stefanus、Kawasaki Takuro、Shibata Akinobu、Kimura Yuuji、Inoue Tadanobu、Tsuchida Noriyuki
    • 雑誌名

      ISIJ International

      巻: 64 ページ: 459~465

    • DOI

      10.2355/isijinternational.ISIJINT-2023-253

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Plastic anisotropy in yield stress of drawn pearlitic steels2024

    • 著者名/発表者名
      Akada Takumi、Ueji Rintaro、Mitsuhara Masatoshi、Yamasaki Shigeto、Tanaka Masaki
    • 雑誌名

      Materials Science and Engineering: A

      巻: 898 ページ: 146380~146380

    • DOI

      10.1016/j.msea.2024.146380

    • 査読あり
  • [学会発表] 加工熱処理によるパーライト鋼の組織制御と今後の可能性2024

    • 著者名/発表者名
      上路 林太郎
    • 学会等名
      日本金属学会東北支部講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] Yield stress anisotropy of carbon steel with elongated pearlite2024

    • 著者名/発表者名
      Rintaro Ueji, Hidetoshi Somekawa, Satoshi Emura, Akinobu Shibata
    • 学会等名
      TMS 2024 Annual meeting & Exhibition
    • 国際学会
  • [学会発表] 伸長パーライト組織の衝撃特性における試験片サイズ依存性2024

    • 著者名/発表者名
      松山 朱莉, 前田 龍生, 佐々木大輔, 津﨑 兼彰, 上路 林太郎.
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会2024年春季(第187回)講演大会
  • [学会発表] Deformation microstructure of pearlitic steel at different conditions2023

    • 著者名/発表者名
      Rintaro Ueji
    • 学会等名
      PRICM11 The 11th Pacific Rim International Conference on Advanced Materials and Processing
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 室温圧縮変形により生じるパーライト鋼の単軸降伏応力の異方性2023

    • 著者名/発表者名
      上路 林太郎, 染川 英俊, 江村 聡, 井上 忠信
    • 学会等名
      第74回塑性加工連合講演会
  • [学会発表] 冷間加工により得られた伸長パーライト組織を有するばね鋼のシャルピー衝撃特性2023

    • 著者名/発表者名
      前田龍生, 松山朱莉, 佐々木大輔, 津﨑 兼彰, 上路 林太郎
    • 学会等名
      日本熱処理技術協会 第96回秋季講演大会

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公開日: 2024-12-25  

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