研究課題/領域番号 |
23H01748
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
綿野 哲 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (40240535)
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研究分担者 |
仲村 英也 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00584426)
大崎 修司 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (40802426)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 全固体電池 / 乾式法 / 加熱混練造粒 / 圧縮成型 / プロセス開発 |
研究実績の概要 |
可燃性の電解液を無機粉体の固体電解質で置き換えた全固体電池は、高い安全性を確保しつつ、高容量で高速充放電が可能な次世代型二次電池である。本研究では、申請者らが培ってきた全固体電池材料の乾式複合化技術を基盤とし、全工程で溶媒を一切使用せず、工程数の少ない圧縮成形法による革新的な乾式生産プロセスを構築するとともに、従来の液系電池を凌駕する電池性能を実現することを目的とする。さらに、本乾式生産プロセスの構築に必要な粉体特性の明確化と制御技術の確立を粉体工学の見地から実践する。2023年度の研究実績は以下の通りである。 1. 正極活物質を加熱しながら混練し、熱と圧縮・せん断を付与することで良好な流動性を兼ね備えた造粒物を作製するプロセスにより、正極活物質微粉体の流動性を改善できることを明らかにした。また、ナノサイズの微粒子を固体電解質微粉体に添加する手法にも着目した。種々の検討の結果、流動性改善に効果がある添加微粒子の種類を絞り込むことができた。また、添加量が少量であれば、材料の電気化学特性を損なわずに流動性を改善できることを明らかにした。 2. 電極材料の圧縮試を行い,固体電解質の粒子径が電極密度と電池性能に及ぼす影響を明らかにした。また,離散要素法を用いて粉体層の圧縮プロセスを評価した。なお,Edinburgh Elasto-Plastic Adhesion モデルを用いて,粒子の塑性変形性を考慮した数値解析を行った。その結果,塑性変形性の粒子を用いた場合でも,大小2成分の粒子からなる粉体層のほうが緻密化されることを明らかにした。このとき,高い塑性変形性の条件下では,細密な充填構造を得るための小粒子添加量が増加することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正極活物質を加熱しながら混練し、熱と圧縮・せん断を付与することで良好な流動性を兼ね備えた造粒物を作製するプロセスを検討した。実験は連続型二軸高温混練装置を用いて実施した。正極活物質として、理論容量が高い硫黄を採用した。比較的融点が低い硫黄と導電助剤を加熱混練することで溶融した硫黄がバインダーとして機能し、サイズの大きな複合粒子が得られた。この複合粒子は原末と比べて流動性が顕著に向上した。硫黄と導電助剤の比率を制御することで、流動性と電池性能がともに向上することが分かった。これと並行して、ナノサイズの微粒子を固体電解質微粉体に添加する手法にも着目した。添加微粒子の種類、添加割合、混合条件を変更して混合物を作製し、流動性に与える影響を調べた。また、微粒子添加後の固体電解質の電気化学的特性についても調べた。その結果、流動性改善に効果がある添加微粒子の種類を絞り込むことができた。また、添加量が少量であれば、材料の電気化学特性を損なわずに流動性を改善できることを明らかにした。 また,本研究グループで独自に開発した電池材料の粉体圧縮試験機を用いて,固体電解質の粒子径が圧縮プロセスに与える影響を評価した。さらに,電池材料の特徴である塑性変形性を考慮した数値解析により,圧縮プロセスを定量的に分析可能とした。成型体内部の空隙率分布や圧力分布など実験では得られない情報を抽出することができるようになった。これらの成果は,目標達成へと直結する重要なものであり,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
微粒子添加法による流動性改善に関する検討を進める。少ない添加微粒子量でも流動性を改善でき、かつ、電池性能を損なわない精密混合プロセスとその最適条件を明らかにする。混合法として、高せん断力で添加微粒子と難流動性全固体電池粉体を精密混合できる混合装置を新たに用いる。このとき、混合後の粒子表面の微構造観察や各種電気化学評価も実施し、流動性向上と電気化学特性変化のメカニズムを明らかにする。 また,活物質の粒子サイズが圧縮成型体に与える影響を実験的に検討する。このとき,高圧での圧縮した際は活物質の割れが生じる可能性があるため,成型体の三次元構造をFIB-SEMにより評価する。さらに,数値解析においても1,000 MPa程度までの超高圧圧縮過程を検討する。このとき,離散要素法では計算が発散する可能性もあるため,その場合は有限要素法を用いた構造解析を行う。超高圧での圧縮プロセスとより定量的に解析することを試みる。そのうえで,実験的検討と数値解析的検討の成果を組み合わせることで電池材料の圧縮メカニズムを明らかにするとともに,圧縮成形法による革新的な乾式生産プロセスを構築に向けた検討を進める。
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