研究課題/領域番号 |
23H01757
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高坂 文彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80828294)
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研究分担者 |
倉本 浩司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究グループ長 (60292778)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | メタノール / CO2還元 / CO2回収 / 固体触媒 |
研究実績の概要 |
希薄なCO2からメタノールを直接合成する新たな触媒反応プロセスの開発を行う。工場排ガスや大気中の希薄なCO2をメタノールに転換するには、通常アミン吸収等によって分離回収したCO2を用いることが想定されている。本研究では、(1)CO2の回収・(2)メタノール合成、の二つの機能を有する二元機能触媒を開発することで、希薄CO2からの新たなメタノール直接合成プロセスの実現を目指す。 本年度は、適切な反応条件(温度、流量および圧力)の探索および触媒開発を行った。本反応はCO2回収と水素化という二つのステップが非定常状態で交互に進行するため、これら二つのステップをともに十分に進行させるための適切な温度域の選定および流量・圧力設定が重要である。これらの反応条件探索のためにCO2吸収材であるNa/Al2O3とメタノール合成触媒であるCu/ZnO/Al2O3(CZA)を用いた試験を行った。これらの材料を層状に充填または物理混合の後に充填し、Step1として5%CO2/N2を供給してCO2回収を進行させ、Step2としてH2を供給して回収したCO2の水素化によるメタノール合成を行った。反応条件の種々の検討の結果、Step1のCO2回収は150℃で、Step2の水素化は150℃から230℃への昇温とともに行い、反応は9気圧で行った。CZAを単体で用いた場合にはCO2吸収性能が低くメタノール合成量も低い値であったが、Na/Al2O3とCZAを層状および物理混合した試料では高いCO2吸収性能を観測し、特に層状に充填した際に比較的高いメタノール合成性能を観測した。これらの反応条件の検討に基づいてCZAにNaの担持を行った二元機能触媒を作製してCO2回収・メタノール合成試験を行った結果、層状充填と比較して性能は低下したものの水素化過程におけるメタノールの生成を観測することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本反応ではCO2回収と水素化という二つのステップが非定常状態で交互に進行するため、これら二つのステップに適した温度域の選定および流量・圧力設定が重要である。本年度は150-250℃の範囲で等温条件および昇温条件の様々な条件で試験を行った。固体触媒を用いた通常のメタノール合成は約200-250℃で行われる。しかし、200-250℃の等温条件でのCO2吸収材のCO2回収およびCO2放出の活性は低く、等温条件で行ったCO2回収・水素化試験ではCO2回収量およびメタノール生成量は小さな値であった。一方、水素化時に昇温過程を組み込むことでCO2回収・放出量およびメタノール合成量が増大することがわかった。反応圧力についても検討し、加圧に伴ってCO2回収量とメタノール生成量ともに大きく向上することもわかった。アルカリ担持を行った二元機能触媒についても開発を行い、上記の反応条件検討を踏まえた試験を行い、メタノールの生成を観測することができた。今後、最適な担持条件を検討することで更なるCO2回収・メタノール生成の向上を行う。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた温度圧力などの反応条件の影響やアルカリ担持を行った二元機能触媒での性能試験の結果をもとに、CO2回収・メタノール生成の更なる向上に向けた検討を行う。CO2回収成分であるアルカリまたはアルカリ土類金属種およびCu等のメタノール合成活性を有する金属種を検討し、最適な担持量や担持方法の検討を行う。開発した触媒の性能を最大限引き出すための反応プロセス開発についても行う。
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