研究課題/領域番号 |
23H01772
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
井藤 彰 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60345915)
|
研究分担者 |
堀江 正信 京都大学, 環境安全保健機構, 助教 (60727014)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 温熱療法 / 磁性ナノ粒子 / ドラッグデリバリーシステム / がん治療 / MPCポリマー / MRI / がん診断 |
研究実績の概要 |
初年度である本年度は、申請書の研究実施計画にしたがって、以下のように研究を進めた。1)MPCポリマーの磁性ナノ粒子への結合法および高密度化戦略の検討を行った。磁性ナノ粒子へのMPCの結合法としてカルボキシ基またはカテコール基を介した方法を比較検討したところ、カテコール基で結合することで堅固に固定することができた。さらに、高密度化戦略として表面開始重合によるMPCポリマーブラシ層構築を行った。ポリマーを合成してから磁性ナノ粒子に結合させる方法ではなく、磁性ナノ粒子表面に開始剤を固定してから表面重合を行う方法で高密度のMPCポリマーブラシ層が形成された。ポリマーの鎖長を変えたナノ粒子を合成して、MRI実験に供した。さらにハーセプチンを共有結合でポリマーに修飾することでHerceptin-MPC-Magnetiteを調製した。2)作製したナノ粒子のマクロファージへの取り込みを評価した。未修飾のマグネタイトと比較して、強力な取り込み抑制効果を示した。3)作製したナノ粒子の血中滞留性、腫瘍集積性および体内動態を調べた。CT26細胞を移植したマウスの尾静脈にナノ粒子を注射して、腫瘍、肝臓、腎臓を摘出し、鉄濃度をチオシアン酸カリウム比色法により定量したところ、腫瘍に磁性ナノ粒子が集積していることが分かった。4)ナノ粒子を含む癌細胞ペレットを使用して、京都大学の1.5 T MRIによりT2緩和時間を測定することで、MRIにより検出に必要な磁性ナノ粒子濃度は3マイクログラム程度であり、ごく少量でも検出可能であることが分かった。5)ナノ粒子の交流磁場照射における発熱能をin vitroで検討した。作製したナノ粒子を用い、360 kHzで8 kWの交流磁場を照射して照射中の溶液温度変化を光ファイバー温度計で計測したところ、5分間で20℃上昇する発熱量を達成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
作製した機能性磁性ナノ粒子のドラッグデリバリーシステムの能力が高く、予想よりもかなり高い腫瘍送達量が達成されたことから、当初の計画以上に進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の研究計画にしたがって、以下の通り、研究を進める。 初年度に作製した機能性磁性ナノ粒子を担癌マウスの尾静脈から投与することで、腫瘍がMRIで撮像され、交流磁場照射で発熱して治療効果を示すかを調べていくことで、がんの診断と治療を同時に行うことが可能な機能をもった機能性磁性ナノ粒子の開発を行っていく。診断と治療を同時に可能とするためには、機能性磁性ナノ粒子のステルス化に十分なMPCポリマーの量を最適化する。さらに、がん細胞特異的に結合するようにハーセプチンのようながん特異的抗体を結合させた機能性磁性ナノ粒子を作製する実験を行っていく。 具体的には、初年度に引き続き、1)機能性磁性ナノ粒子の合成、2)ナノ粒子のステルス性の検討、3)ナノ粒子のin vivo動態の検討、4)MRIによる検出(分担研究者:京都大学堀江助教)、5)ナノ粒子の発熱による癌治療効果、の五つの研究項目を行っていき、それぞれの実験結果をフィードバックしながら機能性磁性ナノ粒子を最適化していく。このことによって、がんの診断と治療を同時に実現可能な機能性磁性ナノ粒子を完成させる。
|