研究課題/領域番号 |
23H01774
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
丸山 達生 神戸大学, 工学研究科, 教授 (30346811)
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研究分担者 |
森田 健太 神戸大学, 工学研究科, 助教 (60804127)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 超分子 / バイオマテリアル / 自己組織化 / ゲル / ペプチド |
研究実績の概要 |
本研究では、がん細胞内で過剰発現している酵素(チロシンキナーゼ)の活性を利用して、自己組織性を持つペプチド脂質をがん細胞内で合成し、がん細胞の選択的な細胞死を誘導することを目的としている。既に10種以上の候補ペプチド脂質を設計・合成し、これらの分子の自己組織性および細胞毒性を評価した。チロシンキナーゼの基質となり得る配列を有するペプチド脂質は、チロシンキナーゼを高発現するがん細胞(例:A431細胞等)を選択的に殺傷する能力があることが確認された。ここでは、マイクロプレートウェル内で平面接着培養されたがん細胞に対する毒性を評価した。このペプチド脂質の自己組織性の評価は、リン酸緩衝液のゲル化能を基に行われた。その結果、カルシウム等の二価金属を含むリン酸緩衝液を使用した場合、チロシン残基のリン酸化がペプチド脂質のゲル化能に大きな影響を与えることが分かった。ペプチド脂質の脂質部分の変更により、その自己組織性および細胞毒性が大きく変化することも明らかになった。これは、ペプチド脂質の自己組織性と毒性が関連していることを示唆している。また、5種類のヒト培養細胞(主にがん細胞)でチロシンキナーゼの活性量を測定したところ、A431細胞およびH1975細胞でチロシンキナーゼの活性が顕著に高いことが明らかになった。以上の結果から、当初予定した検討項目を順調に進めており、目的に合致した実験結果を得ていることが確認されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、がん細胞内で過剰発現している酵素(チロシンキナーゼ)の活性を利用して、自己組織性を持つペプチド脂質をがん細胞内で合成し、がん細胞の選択的な細胞死を誘導することを目的としている。既に10種以上の候補ペプチド脂質を設計・合成し、これらの分子の自己組織性および細胞毒性を評価した。チロシンキナーゼの基質となり得る配列を有するペプチド脂質は、チロシンキナーゼを高発現するがん細胞(例:A431細胞等)を選択的に殺傷する能力があることが確認された。ここでは、マイクロプレートウェル内で平面接着培養されたがん細胞に対する毒性を評価した。このペプチド脂質の自己組織性の評価は、リン酸緩衝液のゲル化能を基に行われた。その結果、カルシウム等の二価金属を含むリン酸緩衝液を使用した場合、チロシン残基のリン酸化がペプチド脂質のゲル化能に大きな影響を与えることが分かった。ペプチド脂質の脂質部分の変更により、その自己組織性および細胞毒性が大きく変化することも明らかになった。これは、ペプチド脂質の自己組織性と毒性が関連していることを示唆している。また、5種類のヒト培養細胞(主にがん細胞)でチロシンキナーゼの活性量を測定したところ、A431細胞およびH1975細胞でチロシンキナーゼの活性が顕著に高いことが明らかになった。以上の結果から、当初予定した検討項目を順調に進めており、目的に合致した実験結果を得ていることが確認されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はA431細胞と正常細胞が混在する系でこのペプチド脂質によりA431細胞のみを選択的に殺傷可能であることを実証する。同時にがん細胞溶解後、共存する正常細胞に悪影響を及ぼさないことを確認する。次にペプチド脂質の細胞内自己組織化がなぜ細胞死を引き起こすのか、そのメカニズムを調べる。このリン酸化ペプチド脂質による細胞死は、アポトーシス、ネクローシス、ネクロトーシスのいずれであるかを、各種関連酵素の阻害剤や市販のApoptotic / Necrotic assay Kitを用いて検討する。また細胞の小胞体(ER)やミトコンドリアへのペプチド脂質蓄積の有無により検証する。ERストレスやミトコンドリア呼吸活性等を測定し、ペプチド脂質蓄積の影響を関連付ける。本システムはチロシンキナーゼの活性を活用したがん選択的殺傷であるため、チロシンキナーゼ阻害剤を用い、ペプチド脂質の細胞毒性がどのように変化するかを検証する。 A431細胞を担癌したヌードマウスを用いて、開発したペプチド脂質の抗腫瘍効果を検証する。ペプチド脂質は軟膏状にして患部に塗布して経皮投与を行う。具体的には、ペプチド脂質、オリゴアルギニン、界面活性剤、イソプロピルミリステートの複合体を作製する。これをA431担癌マウスの患部に絆創膏を用いて塗布する。4週間皮膚がんの成長度合いを観測する。動物実験がうまく行かない場合は、投与方法を局注等に変更し効果を検証する。
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