研究課題
2023年度は、InAs量子井戸を用いたゲート制御量子ドットの作製に取り組んだ。InAs量子井戸は、エッチングで作製したメサの端に電子密度の高い伝導チャネルが形成されることが知られている。この端伝導について、ゲート電極を2層構造にして、1層目のゲート電極を用いて電気的にメサを形成することで、端伝導を抑制可能であることが報告されている。本研究でも同様の構造を採用した。研究協力者が作製したInAs/InGaAs/InAlAs量子井戸基板を用いて、量子ドット電荷計を有する4重量子ドット構造を作製した。次に、作製したゲート制御量子ドット試料を用いて、極低温において電気伝導測定を行った。ゲート電極間のピンチオフ特性において、大きなバックグラウンド電流が観測された。端伝導は抑制されていると考えられるため、このバックグラウンド電流は量子井戸層より深い位置に並列伝導層が存在していることを示唆している、次に、ゲート電極を用いて量子ドットの形成を行った。量子ドットに特徴的なクーロン振動の観測に成功し、量子ドットの形成を確認した。GaAs等の従来材料の量子ドットと比べると動作が不安定であり、これは試料中の欠陥や不純物に起因していると考えられる。さらに、量子ドット近傍に作製した電荷計を用いて単一電荷検出も試みたが、バックグラウンド電流の影響のために明瞭な電荷検出信号は得られなかった。今後は量子井戸基板の改善による並列伝導および欠陥の抑制が必要である。
2: おおむね順調に進展している
2023年度は当初の計画通り、InAs量子井戸を用いたゲート制御量子ドットの作製と低温における量子ドットの形成を達成した。並列伝導による大きなバックグラウンド電流のために単一電荷検出には至らなかったが、ゲート電圧による電荷計伝導度制御は確認しており、今後基板改良による並列伝導抑制によって単一電荷検出は早期に達成可能と期待される。
並列伝導層を形成しないように量子井戸基板構造を改良し、それを用いてゲート制御量子ドットを作製する。単一電荷検出およびスピン読み出しを行い、スピン軌道相互作用を用いた単一スピン操作に取り組む。
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