独自の手法で合成した三次元硫化銅量子ドット超格子のイオン交換反応による多様な組成をもつ量子ドット超格子群の調製を実施した。量子ドット超格子を分解させないように、硫化銅量子ドットにとって貧溶媒であるアルコールを溶媒に用い、Cd2+、Pb2+、Zn2+といった異種カチオンを加え、銅イオン補足剤であるトリアルキルホスフィンを混合して加熱することで数分でほぼすべての銅イオンが異種カチオンに置き換えることができた。このCdSやZnS量子ドットからなる超格子は、もとの規則配列構造を維持し、かつ硫黄アニオン副格子の保存による結晶方位の整列など、マクロな異方性光学材料としての構造的特徴を有することが明らかとなった。特に、ウルツ鉱型CdSやZnSについては、c軸が数十μmにわたって整列しており、偏光光学顕微鏡においてもバルク単結晶のような明瞭な複屈折挙動を示した。また、PbS量子ドットにおいても[111]方向が量子ドット間で整列しており、効果的なキャリア移動につながると期待される。異種カチオンによっては酸化物と思われる副生成物の混合や、ナノ粒子配列の大きな乱れが生じるケースもあったが、イオン交換反応系中にポリビニルピロリドンを添加することで、おそらく酸化物粒子の分散性向上(超格子との分離が可能になる)および超格子構造の保護作用により、超格子の品質が大きく向上した。これは、量子ドット超格子ライブラリの拡充に大いに役立つ発見であると考えている。
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