研究実績の概要 |
本研究は、インフルエンザ・新型コロナウイルスなどの病原体を捕獲する超分子ナノファイバーへと組み上がるグリコペプチド型自己集合性分子の創製を目的とする。その分子設計としては、主にペプチドがナノスケールの構造特性 (ナノファイバーの直径や長さ) 特性を、糖が化学的な性質 (分子認識能や刺激応答機能)を、それぞれ担うモジュール型で柔軟な設計を指針として研究を推進する。 本研究では、以下の戦略1及び戦略2に基づき、病原体を捕獲できる超分子ファイバーを形成する人工グリコペプチド型自己集合性分子の分子設計を確立することを目指している。戦略1:糖を提示した超分子ナノファイバーの創製と糖の分子認識に基づいた病原体の捕獲、戦略2:糖の切断を駆動力に構築される超分子ナノファイバーによる病原体の捕獲 本年度、戦略1に関しては、ヒドロキシルアミノ基と糖の還元末端との反応 [e.g., M. L. Huang et al., J. Am. Chem. Soc., 2014, 136, 10565] を利用する分子設計に基づき、人工グリコペプチド型自己集合性分子の合成研究を実施した。構造の単純な単糖の導入により新規な人工グリコペプチドを合成した。その自己集合能を評価し、構築された超分子ナノファイバーに対してレクチンの分子認識が機能する知見と相関を得た。さらに、病原体の分子認識に関わる糖 (シアル酸含有糖鎖など) の導入を行い、それぞれの糖に対するレクチンの分子認識の選択性を評価した。 戦略2に関しては、チロシンを含んだ自己集合性の短鎖ペプチド分子の合成に着手している。過去の報告 [e.g., A. Lampel et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2021, 60, 7564.] も参考に合成を進めた。超分子ナノファイバーを形成できる新たな短鎖ペプチド分子を見出した。
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