研究課題/領域番号 |
23H01824
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
鈴木 雅登 兵庫県立大学, 理学研究科, 准教授 (60574796)
|
研究分担者 |
安川 智之 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (40361167)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | リポソーム / 誘電泳動 / 電気回転 / 電気形成 / リン脂質 / 膜容量 |
研究実績の概要 |
本年度は電気回転計測の感度と分解能の評価に用いる標準的な電気特性を持つリポソームの作製法を確立した.電気形成法でリポソーム作製時にマンニトールの添加により内液に高い導電率を持つリポソームの作製に成功した.また,リポソームの電気形成に用いる電極基板上への微細な凹凸構造の形成によって,凸領域から選択的にリポソームをその場に保持した状態で作製できることを見出した.これは,リポソーム内での化学反応の経時変化の解析に利用できる新規なリポソーム形成法である.また,リポソームを構成するリン脂質(アニオン性,中性)の種類やコレステロール含有量によって誘電泳動挙動が異なることを見出した.アニオン性リン脂質の割合の増加によって正の誘電泳動と負の誘電泳動が切り替わる交差周波数が低周波数側へシフトした.これはアニオン性リン脂質の増加によって膜容量の増加を意味する.今後は別の膜容量評価法(交流電場下でのリポソームの変形度)でリポソームの膜容量を評価し脂質構成成分と膜容量の関連を明らかにする.そして膜容量が明らかになったリポソームの電気回転挙動を評価し,電気回転計測の精度を確定する. また,リポソームにはサイズにばらつきがあるため、リポソームのサイズを選別する方法を確立した。細胞サイズのリポソームの交差周波数は400 kHzでありそれ以上高周波数の交流電圧の印加により正の誘電泳動の作用を見出した.一方で細胞サイズより小さなリポソームはより高周波数側に交差周波数が観察された.そのため400 kHz以下の交流電圧の印加により細胞サイズのリポソームの濃縮を見出した.今後は細胞サイズのリポソームを濃縮し細胞サイズのリポソームの電気回転評価を進める.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実施目標は,細胞の電気特性を示す標準粒子としてのリポソームの作製とその電気回転評価法の確立である.その結果,リポソームの電気形成時にマンニトールの添加によって細胞質と同程度の導電率を持つリポソームの調製に成功した.また,リポソームを構成するリン脂質の組成によって誘電泳動挙動が異なることを見出し,アニオン性リン脂質の含有率の変更により細胞膜容量の異なるリポソームを作製できることを明らかにした.さらにリポソーム懸濁液に400 khz以下の交流電圧の印加によって細胞サイズのリポソーム(直径8~15μm)に正の誘電泳動が作用し電極へひきつけられることを見出した.この特性の利用によって電極が配置したマイクロウエル型電気回転デバイスに細胞サイズのリポソームのみを選択的に捕捉できることを明らかにした. 以上より,細胞の電気的標準モデルであるリポソームの調製法を確立できたため計画通りの進捗と判断した.今後はリポソームを構成するリン脂質を変更し細胞膜容量の異なる種々のリポソームを調製し,細胞サイズのリポソームをマイクロウエル型電気回転デバイスに捕捉し,細胞膜容量と電気回転速度の関連を明らかにする.
|
今後の研究の推進方策 |
以下の2点を明らかにする. ・電気特性の標準モデルであるリポソームの電気回転評価. 電気回転計測の精度の確立のために,リン脂質の構成割合を変更して種々の細胞膜容量を持つリポソームの電気回転計測を行う.電気回転速度と細胞膜容量の関係を明らかにして,電気回転計測の精度を検証する ・「フタ」つきウエル型電気回転デバイスの確立 単一細胞から分泌されるサイトカインを捕捉するための蓋をウエル型電気回転デバイスに配置する.細胞の電気回転計測を実施するとともに,各単一細胞から分泌されたサイトカインを蓋上に捕捉する.蓋上に捕捉されたサイトカイン量と電気回転速度の関連を明らかにして,電気回転計測からサイトカインの分泌活性の高いT細胞の識別を実現する.
|