研究課題
本研究は、面内強磁場・超低温走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、FFLO超伝導の有力候補、重い電子系超伝導体CeCoIn5と原子層超伝導体の測定を行い、物性物理学における未解決問題の一つであるFFLO超伝導の直接観察を目標としている。本研究の応募段階では、共同研究者から提供されるCeCoIn5の結晶を劈開して超低温STMでの測定を行う予定にしていたが、劈開の歩留まりの悪さを考えると、研究室内で結晶を作成する必要があると考えた。より大型の単結晶を育成することで、超高真空中における劈開だけでなく、表面科学的な手法であるアルゴンスパッタ&アニールなどを用いて表面出しを行うこともできる。そこで、2023年度はCeCoIn5の単結晶育成を開始し、すでに大型の単結晶育成に成功している。また、Ndを20%ドープし、超伝導と反強磁性の共存が期待されるサンプルの作成も成功している。また、室温部の真空チャンバーから、超低温の希釈冷凍機へのサンプルトランスファーを可能にする試料搬送機構と、試料アニール用のヒーティングステージの設計及び開発を行なった。ほぼ全ての設計は終了し、発注済みの部品の到着を待っている段階である。一部設計が完成していない部分に関しても近日中に終了し、発注を予定している。懸案事項であった音に対するSTMの脆弱性は除振機構をSTMヘッド内部に仕込むことで軽減するためのテストを室温大気中で行った。テスト試料には室温大気中で測定がしやすいです、Au(111)/micaを大気中でアニールして清浄化し、ステップ構造を出して測定を行った。室温大気中でのテスト後には、超高真空・窒素温度でのテストを同じセットアップで行い、音への脆弱性の大幅な軽減が確認できた。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた防音室の設置は、予算の減額等で難しくなったが、その代わりにSTMヘッドに除振機構を導入したことで音への脆弱性を取り除くことができた。一方で、絶縁性の除振材料を導入したことで、試料が到達できる最低温度が上昇した可能性は考えられる。現在、希釈冷凍機のヘリウムガス循環配管にリークが見つかったために、より低温でのテストが完了していない。このような点から、概ね順調に進展しているとした。
まずは希釈冷凍機の故障の問題を解決し、試料の最低温度を確かめる。もし、最低温度がFFLO相の観察に十分な超低温ではないと判断した場合には、より効率的に試料を冷やす方法を考案し、作成する。また、制作したチャンバーと試料搬送および試料加熱機構を完成させる。試料加熱機構のテストに関しては、使い慣れたAu(111)/micaもしくはSi(111)の清浄化を行い、
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