| 研究課題/領域番号 |
23K26559
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| 配分区分 | 基金 |
| 研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
本田 善央 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (60362274)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2026-03-31
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| キーワード | GaN / 4元混晶 / 電子デバイス / バイポーラートランジスタ / ヘテロバイポーラートランジスタ / 分極 / バンドエンジニアリング |
| 研究実績の概要 |
本研究では、AlInGaNの四元混晶における結晶成長を中心に、各組成に対する歪および分極の計算を行い、HBT(ヘテロバイポーラトランジスタ)およびHEMT(高電子移動度トランジスタ)への応用を視野に、実現可能な組成領域の検討を進めた。In組成は10%以下を上限とし、Al組成を約50%、In組成を5~10%に変化させた範囲において、特性評価を重点的に実施した。 In組成を高めるには成長温度を低下させる必要があり、この傾向はInGaNの結晶成長と同様で、AlInGaN特有の条件ではないことを確認した。一方で、成長温度の低下により結晶中の不純物、特に炭素(C)および酸素(O)の濃度が顕著に変化することが課題であることが明らかとなった。 そこで、Ga源としてトリメチルガリウム(TMG)およびトリエチルガリウム(TEG)を用い、各条件における不純物濃度の変動を詳細に解析した。酸素濃度は成長温度が730~860℃に変化することで、2e18~1e17 cm-3の範囲で推移し、V/III比の増加によってもわずかに上昇することが確認された。これ以上の温度上昇はIn組成の低下を招くため、860℃が妥協点と結論付けた。 炭素濃度に関しては、TEGをGa源とすることで、上記温度帯においてTMGより1~2桁低いC濃度を実現できることが判明した。また、成長速度の増加がC濃度の急激な上昇を引き起こすことを見出したため、現時点では4 nm/min程度が最適とされた。C濃度は成長温度、V/III比、原料供給量には大きく依存せず、TEGによる低速成長では8e16 cm-3程度の低不純物濃度を達成でき、実用的な制御が可能であることを示した。 これらの結果をもとにAlInGaN/GaN HEMT構造を作製し、2次元電子ガス濃度を計測したところ、分極の計算値と一致し、低不純物による高性能電子デバイスの実現可能性を確認した。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
1: 当初の計画以上に進展している
理由
AlGaINの結晶成長は、AlN、GaN、InNの成長温度が大きく異なることから、非常に困難である。特にInNの蒸気圧が高いため、低温成長を余儀なくされる。そのような制約のもと、定温における不純物濃度制御を実現がデバイス応用に対して不可欠なものである。本研究では結晶成長技術の開発を軸足として研究を行ってきた結果、Al0.5Ga0.4In0.1Nの組成の4元混晶を低い不純物濃度(C:8e16 cm-3, O:1e17 cm-3)を実現することを可能とした。また、この結晶を用いてAlInGaN/GaN HEMT構造を作製し、2次元電子ガス濃度を計測したところ、分極の計算値と一致しており、低不純物化により高性能電子デバイスの実現可能性を確認した。 また、別途HBTのベース層薄膜化に関しても検討を続けている。ベースの薄膜化はHBTの電流増幅率増加に大きく貢献するだけでなく、走行時間の低下に伴う高速動作も同時に実現する。一方でアーリー電圧の減少が起き、増幅線形性の低下、出力抵抗の低減などデバイス特性の悪化が懸念される。現段階でこれまで100 nmのベース層を用いてきたが60 nmまで低減することに成功し、電流増幅率が50以上、アーリー電圧は-200 V程度と高く、十分な性能を示すことに成功している。今後、HBTとして4元混晶の導入を行うことで、バンドエンジニアリングと更なる高速化が期待されている。 このように結晶成長およびデバイス動作の両面から準備が整ってきている。さらに4元混晶の解析が進み、新しい構造のHBTのコンセプトの模索も進んでいる。研究を通して、当初予定していなかったより高性能なデバイス応用が期待されており計画以上に進んでいると考えている。
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| 今後の研究の推進方策 |
これまでに、結晶成長およびデバイス作製の両面から、目標とする新規デバイスの基本構造要素が得られつつある。特に、研究の進展によりAlInGaN四元混晶に関する解析技術が大幅に向上し、従来困難であった新規デバイス設計も現実的なものとなってきた。一方、現時点で未着手の課題としては、分極ドーピングを用いたベース層の実現が挙げられる。これまでに、ヘテロ成長を利用した分極ドーピングp型GaNの成長および特性評価に関する実験的知見は蓄積されてきたが、これをHBTベース層に組み込んだ構造の検証は今後の課題である。この課題に対しては、以下の2つの方針で実験を推進する。 ・三元混晶を用いた層構造の作製とベース層の評価 SEM(走査型電子顕微鏡)やKFM(ケルビンプローブフォース顕微鏡)を用いたp型性の評価を行い、さらに実デバイスを作製し、その動作確認を通じてベース層の機能を検証する。 ・四元混晶を用いた場合の組成制御と分極ドーピング 電流‐電圧特性の測定とバンドエンジニアリングの視点から、最適な組成を決定し、分極ドーピングの効果を最大化するための組成制御方法について検討を行う。 これらの基礎的な実験データの蓄積を、今後の研究推進の中核と位置づける。特に、新規設計デバイスは複雑な構造を有しており、設計コンセプトの妥当性を確認するためには、シミュレーションによる事前評価が不可欠である。あわせて、分極ドーピングに関する実験結果との整合を取りながら、デバイス設計側と材料基礎データの両面からの総合的検討を行い、今後の研究の発展に向けた重要な基盤情報とする。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
本年度は実験が当初の計画よりも順調に進行したため、GaN基板の使用枚数を想定の5枚から抑えることができ、その分の費用(約30万円×数枚分)が未使用となった。これにより次年度へ繰越が生じた。次年度は分極ドーピングに関する実験を開始する予定であり、より精密な組成制御が求められる。そのため、SIMS(二次イオン質量分析)による詳細な組成分析を強化する計画である。分析は1サンプルあたり約10万円であり、複数ロットに対して実施する必要があるため、50万円規模の分析を2セット分実施する予定である。
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