研究実績の概要 |
アト秒物理学の急速な発展の一方で,この方法論では素粒子・原子核物理学の様な基礎物理学の研究ができないと考えられてきた.私達は,ポジトロニウムや湯川中間子の様な基礎物理学において非自明な不安定粒子の寿命をアト秒の精度で測定することで,基礎物理学における諸問題を直接的に検討するという新奇方法論を世界で初めて提案し[T. Kanai et al., CLEO/IQEC, paper CG-P.7 (2013)],その素過程であるポジトロニウム負イオンの光脱電子過程の観測に成功している[K. Michishio, T. Kanai et al., Nat. Commun. 7, 11060 (2016).].本研究計画では,本新奇方法論による「アト秒素粒子物理学の開拓」を目指し,分光システムの開発と実証実験[T. Kanai et al., Nature 435, 470 (2005)型など]までを行う. 初年度である今年度は, 4ミクロン帯のKTA光パラメトリック増幅器をシード光としたFe:ZnSe中赤外チャープパルス増幅器の開発と,高次高調波発生用チェンバー及び分光器の高度化を行った[(招待講演) T. Kanai et al., ASSL/LAC, Tacoma, Washington, USA, Oct. 9th-12th, 2023. 等].前者については,ウィーン工科大A. Baltuskaグループとの共同研究を通じKTA光パラメトリック増幅器をまず行い,次に本レーザーをシード光としたFe:ZnSeマルチパス増幅器によるサブmJ程度までの増幅,400fs程度までのパルス圧縮,さらに応用実験としてZnS結晶中における第9次高調波発生を観測した.後者については,アト秒パルスの検出効率の向上のため,代表者が過去に開発した高次高調波発生及び分光器に最先端のX線CCDを導入した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である今年度は,当初の計画通り4ミクロン帯のKTA光パラメトリック増幅器をシード光としたFe:ZnSe中赤外チャープパルス増幅器の開発と,高次高調波発生用チェンバー及び分光器の高度化を行った.本研究成果は当該分野に大きな波及効果をもたらし,実際研究代表者は,本分野における最も権威がある国際学会の一つである,Advanced Solid State Lasers Conference (ASSL)/Laser Applications Conference (LAC)において招待講演を行った. [(invited) T. Kanai et al., ASSL/LAC, Tacoma, Washington, USA, Oct. 9th-12th, 2023. ]. 研究進捗の前者については,予定通りウィーン工科大A. Baltuskaグループとの共同研究を通じKTA光パラメトリック増幅器をまず行い,次に本レーザーをシード光としたFe:ZnSeマルチパス増幅器によるサブmJ程度までの増幅,400fs程度までのパルス圧縮,さらに応用実験としてZnS結晶中における第9次高調波発生を観測した.後者については,アト秒パルスの検出効率の向上のため,代表者が過去に開発した高次高調波発生及び分光器に最先端のX線CCDを導入した.
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