研究課題/領域番号 |
23H01900
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小林 知洋 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 専任研究員 (40282496)
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研究分担者 |
池田 翔太 東京工業大学, ゼロカーボンエネルギー研究所, 助教 (10845746)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | リニアック / 高周波四重極 / RFQ / 正負イオン同時加速 / 正イオン源 / 負イオン源 |
研究実績の概要 |
本研究はRFQリニアックにおける加速陽子数を格段に増加させることを目的とする。その手法は正イオン(H+)および負イオン(H-)を同時入射させる新しい手法による。近年、負イオン源の利用が盛んになっているが、一台の加速器による正負イオン同時加速が世界で行われた例はなく、正負イオン同時入射は空間電荷効果を緩和しつつ加速器の真空度を良好に保つ新たな試みである。本研究では明確な応用対象として小型加速器中性子源を選定した。小型加速器中性子源開発では装置構成をできるだけシンプルにし、総重量や全長、設置面積をなるべく小さくすることが重要である。本研究は加速器中性子源において、装置の大型化を要せずに中性子発生量を増加させる試みとして位置づけられる。 初年度は(1)分析電磁石の設計・製作、(2)負イオン源の整備、(3)正イオン源の整備と単体試験の三項目を行った。分析電磁石は、加速器入射軸から+30度、-30度方向からそれぞれ正負の35keVの水素イオンビームを受け入れる形とした。偏向半径400mm、磁極ギャップ60mmとした結果、要求される磁場強度は0.2T以上となった。発熱量の見積から水冷方式とした。真空チェンバー、架台を含めて製作を行った。負イオン源は検討の結果、既存のセシウムスパッタ方式のものを再整備して利用することにした。消耗品交換と清掃、電源整備の結果、加速器と連結可能な真空度が得られている。負イオン電流については数百ナノA程度に留まっており、引き続きパラメータ調整を行う。正イオン源は電子サイクロトロン共鳴(ECR)タイプを採用し、RFQリニアックに直結してミリAオーダーの加速電流(パルス波高値)を得た。次年度はこれらの合流入射を試みるほか、効率的入射を行うためにソレノイド電磁石の製作を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では負イオン源については設計・製作する予定だったが、既存品を再整備して使用することとした。これはマグネット製作および電源調達コストの上昇が理由である。その結果、設計に要する期間が短縮された一方、消耗品や電源の大幅な交換や劣化部分の特定作業などトライアンドエラーの回数が増え、トータルとしては概ね予定通りの進展となっている。マグネットの設計製作・正イオンの運転調整については計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者が機器の設計・製作とビーム実験を担当、研究分担者がビーム挙動解析時の数値シミュレーションを担当して研究を推進する。今後の研究推進計画は以下の通りである。 (1)ソレノイド磁石の設計・製作-- 正負ビームを合流させる際に、加速器との距離が必要である。その際ビームが発散してしまうのを防ぐため、ソレノイド磁石を設置する。磁場・ビーム軌道・熱計算を行った必要な電力・巻き数・冷却システムを設計する。 (2)水素負イオン源単体試験-- 負イオン源はセシウムスパッタ方式を採用し、既成装置からの部品流用と新規調達によって稼働させた。現状では電流値が小さいため、少なくとも数マイクロアンペア程度のビームを得ること目指す。ビームは直流とし、パルス化は行わない。 (3)正負ビーム合流・加速試験-- 正負それぞれのビームについて、RFQ加速器に導入して加速試験を行う正負イオンの同時入射により、入射時のみならず加速初期の低収束部におけるビームロスも減少しRFQは正イオンのみの場合の2倍かそれを超える粒子を加速することができると考えられる。RFQ出口部においては、200 MHzで運転するRANS-IIの場合、正イオン、負イオンのバンチが交互に合計400 MHzで射出される。加速後は再び偏向磁石により正負イオンを分離し、それぞれカレントトランスやファラデーカップ、高速オシロスコープ(いずれも既存)を用いて計測を行う。
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