研究課題/領域番号 |
23H01934
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 良太 京都大学, 化学研究所, 特定助教 (80629890)
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研究分担者 |
飯田 健二 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (20726567)
川脇 徳久 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 講師 (60793792)
治田 充貴 京都大学, 化学研究所, 准教授 (00711574)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | プラズモニクス / 局在表面プラズモン共鳴 / 無機ナノ粒子 / 規則合金 / 金属間化合物 / 結晶構造 |
研究実績の概要 |
ナノサイズの金属が特異的に示す光学特性の一つに、紫外・可視・近赤外領域における局在表面プラズモン共鳴(LSPR)があり、顔良から創エネ ・省エネにわたる幅広い分野への貢献が期待される。LSPRを示す金属ナノ材料としては、化学的な安定性や合成の容易性から、貨幣金属(金、銀、銅)等の単一金属を対象とした材料開発が展開されており、二元系以上の多元合金については多くの未探索領域を残している。本課題ではプラズモニック規則合金の学理構築を推進するとともに、新奇材料の多様性と優れた機能性を開拓する。 種々の結晶構造を有する卑金属含有合金ナノ粒子の合成手法を確立した結果、B2(CsCl型)、C1(CaF2型)、L12(Cu3Au型)、L10(CuAu型)、B81(NiAs型)構造などの様々な規則合金(金属間化合物)がコロイド状態で可視域近傍に吸収ピークを示すことを見出し、吸収がLSPRに起因することを分析実験と理論計算の両面から明らかにした。LSPRの発現機構を理論的に検証するため、ナノ粒子モデルの光励起電子ダイナミクスを解析し、貨幣金属との類似性と相違性を明らかにした。類似性として、自由電子の集団振動に由来する大きな電子分極が粒子表面で生じ、粒子内部では各原子近傍に束縛されたd電子の分極が逆位相で確認された。この束縛電子の逆位相での分極はスクリーニングと呼ばれ、LSPRのエネルギー低下に寄与する現象である。貨幣金属などの単一金属においてd電子は一様にスクリーニングに関与する一方、典型元素を含む規則合金では束縛エネルギーの大きな典型元素のd電子はスクリーニングへの関与が小さいことが相違性として明らかになった。とりわけ、C1-PtIn2では構成原子数の少ないPtのd電子による大きな変位でのスクリーニングによって効率的にLSPRのエネルギーが低下していることを明らかにし、規則合金における結晶構造や組成がLSPR特性の重要な制御因子になり得ることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、(1)紫外・可視・近赤外LSPRのための電子・結晶構造的要請の定量化および(2)優れたプラズモン特性が期待される新規材料群の創製を検討・実施したところ、「研究実績の概要」に記載した結果を得た。 (1)では、プラズモニック規則合金材料群のライブラリーの拡充に伴って、電子構造や結晶構造がLSPR特性に与える影響がより明確になりつつある。電子構造と結晶構造は互いに強く影響を及ぼし合う要因である一方で、結晶構造のみで決まる幾何学的因子の重要性の解明など、(2)の検討に資する材料設計指針の進化が得られた。 (2)では、(1)で得られた材料設計指針に基づき、優れたプラズモン特性が期待される規則合金ナノ材料の合成に取り組んだ。難還元性卑金属を含む合金ナノ材料の調製では、化学的な手法の検討と並行して複数の物理的アプローチに取り組むとともに、バルク体の作製と光学特性評価を行うことで、ナノサイズ化に注力すべき材料候補の選定を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度と同様の手法によって(1)紫外・可視・近赤外LSPRのための電子・結晶構造的要請の定量化および(2)優れたプラズモン特性が期待される新規材料群の創製を検討・実施し、学術的知見の深化を試みる。中でも、規則合金(金属間化合物)に見られるバラエティに富む結晶構造は、既存材料である貨幣金属などの単一金属にはない特筆すべき特徴であり、結晶構造に固有の原子配列や対称性に起因するユニークなプラズモン特性の解明に積極的に取り組む。また、材料応用としては、適切な材料を選択し、プラズモニック電極触媒やプラズモニック光触媒への展開を進める。
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