今後の研究の推進方策 |
引き続き、-3価のイオン性を有し、発光性を示すAg29クラスターを中心に検討を行う。イオン半径の異なる種々の対イオンを有するAg29クラスターについて調製と物性評価を行う。テトラヒドロホウ酸のアルカリ金属塩(Li+, Na+,K+, Cs+)を還元剤として用いることで、対カチオンを変えたAg29クラスターを合成する。これらについて、結晶化条件を検討し、すべてのクラスターについてX線結晶構造解析を行うことで、これら対カチオンの局在構造と光物性(吸収・発光)の相関を明らかにする。一方、励起状態においては、Ag29クラスターのシェル構造が収縮する可能性が示唆されている。特に、クラスターのシェルにおいては、配位子がらせん配置を有することが分かっており、キラル構造特有の励起状態緩和構造が期待される。そこで、エナンチオマー分離を検討し、分離できたサンプルについて、キラル励起状態の特性に関して、円偏光発光(CPL)測定を行う。 X線結晶構造を元に、量子化学計算(DFT、TDDFT計算)を実施し、その電荷分布と光学遷移に関わる各超原子軌道の形状ならびにエネルギー変化の相関について評価する。すでに、超原子軌道形状を再現するDFT計算の条件については知見を得ている。これらの励起状態における緩和構造についても検討し、キラルな構造緩和に関して理論的な考察を行う。さらに、結合した金属イオン(カチオン)を起点とした表面固定錯体を形成し、クラスター周縁空間への構造・機能拡張を行う。チオールやチオレートに親和性を示す、Au+,Cu+, Cu+, Hg2+, Zn2+, Cd2+, Fe2+をはじめとする金属塩の添加による光学特性の変化を評価する。さらに、キラル配位子などの機能性配位子を配位したこれらの金属錯体イオンを用いることで、クラスター上に拡張配位空間を構築する。
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