アルキルアリールケトンとピナコールボラン(HBpin)に対して,光照射かつ加熱条件下でロジウム触媒を作用させると,炭素-炭素σ-結合のホウ素化が進行し,アリールボロン酸エステルが高収率で得られることを見出した。これは,ケトンを基質(アリール源)として用い,そのアシル基炭素-炭素結合を直接切断して,分子間アリール化を実現した初の例である。これらは本研究計画申請時に得ていた予備的知見であり,国際論文誌に発表することができた。また本反応の応用展開を目指し,反応基質としてケトン含有ポリマーを用いた反応を試み,反応効率や生成物について一定の知見を得ることに成功した。 またこの知見に基づき,ホウ素化以外の炭素ー炭素結合変換反応の開発に取り組んだ結果,ホウ素化剤に替わる反応相手としてアリールハライドを用いることで,炭素ー炭素結合形成によるアリール化反応が進行することを見出した。反応条件や配位子について検討を行った結果,生成物収率と選択性を良好なレベルまで向上させることに成功した。本反応の収率や一般性については未だ不十分でありさらなる改善が必要であるが,これはケトンをアリール源とする分子間クロスカップリングを実現した初めての例として意義深い。
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