研究課題/領域番号 |
23H01964
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
大橋 理人 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (60397635)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | パーフルオロアルコキシド錯体 / パーフルオロアルコキソ化 / 11族遷移金属錯体 / 遷移金属錯体活性種 |
研究実績の概要 |
代表者は既に、フェナントロリンを支持配位子とする銅(I)パーフルオロアルコキシ錯体 (phen)CuO(CF2)5CF3 と臭化ベンジルとの反応から所望のベンジルパーフルオロアルキルエーテルが得られない一方、NHC を支持配位子とするフッ化銀錯体 (SIPr)AgF から調製した銀(I)パーフルオロアルコキシ活性種 (SIPr)AgO(CF2)5CF3 を用いると臭化ベンジルをパーフルオロアルコキシ化できることを見出している。そこで、NHC を支持配位子とする一連の NHC-銅(I)パーフルオロアルコキシ錯体 (NHC)CuO(CF2)5CF3 を合成するとともに、単結晶X線構造解析の結果、IPr を支持配位子とする NHC-銅パーフルオロアルコキシ錯体は結晶格子中にて単量体として存在する一方、IMesF(Cp) を支持配位子とする類縁体は結晶格子中にて二量体構造をとることを明らかにした。さらに、構造決定した前者の錯体 (IPr)CuO(CF2)5CF3 と臭化ベンジルとの反応から、ベンジルパーフルオロアルキルエーテルを収率63%で単離した。
また、 (IPr)CuO(CF2)5CF3 の酸化を予備検証に着手し、酸化剤として disulfiram (Et2NC(S)S-S(S)CNEt2) を用いた銅(I)パーフルオロアルコキシ錯体の酸化を検討したところ、Cu(edtc)2 の副生と白色粉末の生成を確認した。白色粉末の溶解性が乏しいため、現在のところその構造の同定には至っていないが、Cu(edtc)2 の副生が確認されていることから、銅(III)パーフルオロアルコキシ錯体 (IPr)Cu[O(CF2)5CF3]3 の生成を期待し、目下、この白色固体の構造決定に取り組んでいるところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画「種々の遷移金属フルオリドと酸フルオリドとの反応精査と、多種多様な遷移金属パーフルオロアルコキシ活性種の実用的な調製法の確立」については、一連の NHC-銅(I)パーフルオロアルコキシ錯体の汎用的な合成法を確立するとともに、いくつかの錯体の分子構造を単結晶X線構造解析にて明らかにすることができた。さらに、本年度の当初計画には加えていなかった「高原子価銅パーフルオロアルコキシド錯体活性種の調製法の創製」についても、予備的な段階ではあるが所望の酸化反応が進行している可能性が示唆されている。したがって、本研究課題の進捗状況については、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
進捗状況に記載の通り、概ね計画は順調に進行している。引き続き、遷移金属-フッ素結合(M-F 結合)に対するパーフルオロ酸フルオリドの挿入を基盤とする遷移金属パーフルオロアルコキシド活性種の調製法確立と、種々の有機分子骨格にパーフルオロアルコキソ基導入法の創出を目指す。特に来年度は、SIPr 以外の種々の NHC 配位子を支持配位子とする NHC-銀(I)パーフルオロアルコキシ活性種 (NHC)AgO(CF2)5CF3 について重点的に取り組む。
また、本年度の予備的な知見を踏まえ、酸化反応についても引き続き検証する。具体的には、トリフルオロメチル銀(I)錯体の酸化に実績のある事が知られているヨードベンゼンジクロライドを酸化剤として用いる反応系について検証を進める予定である。
|