研究課題/領域番号 |
23H01974
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大木 靖弘 京都大学, 化学研究所, 教授 (10324394)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 鉄 / クラスター / 錯体 / 還元反応 |
研究実績の概要 |
研究代表者らはこれまでに、Fe(II)アミド錯体とピナコールボランおよび保護配位子(主に三級ホスフィン類)を混合するFeクラスター錯体の合成法を開発し、新規鉄クラスター錯体の合成と構造決定を進めてきた(JACS 2017他)。従来研究ではPMe3など立体障害が小さい保護配位子を用いてきたが、本研究ではかさ高いホスフィン類の利用を検討した。かさ高い保護配位子を用いた場合、クラスター表面で配位子間の立体反発が生じやすくなり、クラスター表面に存在できる配位子数が制限されるため、結果として大きいクラスター錯体が生じると考えられる。 以上の発想に基づいてPtBu3を用いる反応を検討した結果、カチオン性Fe55クラスター錯体[Fe55H46(PtBu3)12]+が、アニオン性Fe6クラスター錯体[Fe6H8{N(SiMe3)2}6]-とのイオン対として生成した。このクラスター錯体を、以下[Fe55][Fe6]と記載する。この錯体が生成する反応条件を精査し、最終的に結晶収率10%前後で再現性良く高純度サンプルを得る実験プロトコルを確立した。得られた単結晶のX線結晶構造解析により、カチオン部位に含まれる55個のFe原子が正二十面体構造を形成していることと、正二十面体に12箇所ある頂点には1つずつPtBu3が配位していることを確認した。またアニオン部位は正八面体構造を形成する6つのFe原子と、各Fe原子に末端配位したアミド基、および八面体の各面を三重架橋するヒドリドで構成されることも確認した。Fe55正二十面体のFe-Fe結合長からは、金属殻の内部にはヒドリド(水素原子)が存在しないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
錯体分子として先例が無く、分子の化学として未踏領域を切り拓く1 nmを超える金属殻のFe55クラスター錯体を発見した。また、Fe(II)アミド錯体を前駆体とする一段階反応でFe55クラスター錯体を合成できることを実証し、さらに合成条件を最適化して再現性良く高純度サンプルを得られるようにした。分光測定等による同定を進め、クラスター化学の新領域を開拓する第一歩を成功裏に踏み出している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では未踏化合物[Fe55][Fe6]の発見に至ったことから、まずはこの化合物を詳細に同定し、論文発表を目指す。その同定-解析手段としては、NMRスペクトルや、重水素標識実験と質量分析の組み合わせによるヒドリド数の決定実験、鉄の電子状態について知見が得られる57Fe Mossbauerスペクトル、鉄の酸化数に関する情報が得られるXAFSや構造情報が得られるEXAFS、スピン状態について情報が得られるESRと磁気測定(SQUID)等を予定する。 さらに、Fe(II)アミド錯体を前駆体として進めたクラスター錯体の合成研究をコバルトへも展開すべく、検討着手する。研究代表者らはCo(II)アミド錯体を前駆体とする関連反応から八面体型Co6クラスター錯体の合成に成功しており(ACIE 2016)、準備は整っている。
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