研究課題/領域番号 |
23H02001
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
稲木 信介 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (70456268)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | バイポーラ電気化学 / 濃厚電解液 / イオン液体 / 電解重合 / 導電性高分子 |
研究実績の概要 |
本研究では、濃厚電解液やイオン液体(イオンのみから構成)などの高濃度イオンを含む電解メディア中でのバイポーラ電気化学駆動の原理検証を行い、従来検討されてきた希薄電解液を用いるバイポーラ電気化学とは異なる、新しい濃度領域でのバイポーラ電気化学の方法論を確立することを目的とする。 本年度は、3種類のイオン液体を用いて、電場伝達効率、粘度、イオン導電率の測定を行った。粘度が大きい、すなわち導電率が小さいイオン液体に関しては希薄電解液系に近い電場伝達効率を示すことが明らかとなった。電場伝達効率に違いはあるものの、いずれのイオン液体を用いた場合においてもバイポーラ電極を駆動できることを見出した。次に、バイポーラ電解重合によってファイバー上の導電性高分子構造体を与える3,4-エチレンジオキシチオフェンをモノマーとして、各種イオン液体中でバイポーラ電解重合を試みた。その結果、バイポーラ電極末端からファイバー上あるいは粒塊状の高分子が析出し、それぞれ異なるモルフォロジーを示した。電場伝達効率に加え、モノマー(小分子)の拡散係数も重要なパラメーターであると考え、電気化学測定により小分子の拡散係数を測定し、モルフォロジーに与える効果について明らかにした。 このように、従来のバイポーラ電極発現条件とは真逆な高濃度電解液を用いることができることを見出し、バイポーラ電気化学における新しい可能性を見出したと言える。一方で、高粘度電解液であるがゆえに導電性高分子ファイバーの形状制御が困難であることが課題となった。今後は、研究計画に沿って、濃厚電解液(電解質+有機溶媒)を用いた場合の溶液物性を調査し、バイポーラ電気化学に利用するために最適な電解液濃度の検討を行う。これにより、得られる導電性高分子ファイバーの形状や成長速度の制御を達成する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、イオン液体中でバイポーラ電極が駆動するかどうか調査を行った。従来、バイポーラ電極は希薄電解液条件で発現させるため、真逆の電解質濃度条件である。既報により、イオン液体中においてピロールのバイポーラ電解重合を実施している例はあるものの、イオン液体の物性値に基づくバイポーラ電気化学パラメーターの設定や、希薄電解液との比較に関して新しい知見を得た。具体的には、3種類のイオン液体を用いて、電場伝達効率、粘度、イオン導電率の測定を行ったところ、粘度が大きい、すなわち導電率が小さいイオン液体に関しては希薄電解液系に近い電場伝達効率を示すことが明らかとなった。電場伝達効率に違いはあるものの、いずれのイオン液体を用いた場合においてもバイポーラ電極を駆動できることを見出した。 次に、バイポーラ電解重合によってファイバー上の導電性高分子構造体を与える3,4-エチレンジオキシチオフェンをモノマーとして、各種イオン液体中でバイポーラ電解重合を試みた。その結果、バイポーラ電極末端からファイバー上あるいは粒塊状の高分子が析出し、それぞれ異なるモルフォロジーを示した。電場伝達効率に加え、モノマー(小分子)の拡散係数も重要なパラメーターであると考え、電気化学測定により小分子の拡散係数を測定し、モルフォロジーに与える効果について明らかにした。 このように、従来のバイポーラ電極発現条件とは真逆な高濃度電解液を用いることができることを見出した。これはバイポーラ電気化学における制約を解放するとともに、より優れた材料特性を付与できる可能性を意味している。以上のことから、本年度の達成度に関して、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、3種類のイオン液体を用いて、バイポーラ電解重合が可能であることを見出した。一方で、高粘度電解液であるがゆえに導電性高分子ファイバーの形状制御が困難であることが課題となった。今後は、研究計画に沿って、濃厚電解液(電解質+有機溶媒)を用いた場合の溶液物性を調査し、バイポーラ電気化学に利用するために最適な電解液濃度の検討を行う。これにより、得られる導電性高分子ファイバーの形状や成長速度の制御を目指す。
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