研究実績の概要 |
白金族金属等の希少金属の安定供給策は国家規模で重要視されており、我が国独自の希少金属回収技術の開発は喫緊の課題である。2023年度は「新規アミド系抽出剤の創製及び抽出挙動解析」及び「加温式EQCM法によるイオン液体界面挙動・電解析出挙動の解明」を主体的に実施した。 1.新規アミド系抽出剤の創製及び抽出挙動解析 触媒成分の希少金属(Pt,Pd,Rh,La,Ce)からの白金族元素の選択的分離では、研究分担者:佐々木が独自に研究開発を進めてきた新規のアミド系抽出剤の研究成果を活用し、アミド系抽出剤の創製を進めた。ここで、配位子:Nはソフトドナーによる白金族元素の選択性向上、配位子:Oは特異的な選択性発現のために構成されており、白金族元素の中でもPtに対して、三座配位による特異的抽出が可能となった。また、Ptの選択的抽出ではイオン対抽出機構を活用した。特に、イオン対抽出の進行により、イオン液体中に荷電錯体が逐次形成されていくため、効果的な抽出分離が実現できた。また、電気伝導性の向上にも寄与しており、抽出分離後の電解析出過程にも結び付けることができた。
2.加温式EQCM法によるイオン液体界面挙動・電解析出挙動の解明 ホスホニウム型イオン液体:[P222X][TFSA],(X=5,8,12)を利用した抽出系では、Pt(IV)抽出錯体に対して、加温式電気化学水晶振動子マイクロバランス法(EQCM法と略記)を適用した。EQCM解析結果において、電流-電位曲線(CV)からPt(IV)抽出錯体はPt(IV)+2e-→Pt(II), Pt(II)+2e-→Pt(0)の二段階還元で進行することを明らかにした。また、電極界面の微小重量変化(Δm)からPt(II)/Pt(0)の電解析出過程では、見かけの分子量:Mapp=193.7と算出され、理論値:195.8に対して矛盾していないことを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の研究項目に着目して、研究を進めていく。 1.Rh(III)抽出-電解挙動の解明 白金族元素の中でもRh(III)は抽出分離が極めて困難であることが知られているが、新規抽出剤:NTAamide(C6)にプロトン付加させた抽出系において、Rh(III)抽出率が顕著に高いことを予備試験段階で確認しているため、Rh(III)抽出-電解挙動の解明を主体的に実施する。次に、Rh(III)抽出錯体に対して、電気化学的分解を抑制可能な電解条件の探索を試みる。これは高純度化技術を確立する上で重要な研究要素の1つである。ここで、分解生成物を生じない過電圧、電流密度等の電解条件を把握し、電流効率:80%以上、電析物純度:90%以上を目指す。さらに、SEM/EDX,XPS,XRDにより、電析物の組成及び化学結合状態を評価し、白金族金属に対する高純度化技術の確立を目指す。 2.実廃棄物からの高純度化プロセスの適用性検討 基礎研究成果に基づき、実際の自動車排ガス浄化触媒を利用し、前処理~溶媒抽出~電解析出に至る一連のプロセスを実施する。ここで、抽出分離工程では白金族元素(Pt,Pd,Rh)の抽出率、分配比、分離係数を定量的に評価する。また、電解析出工程ではカソード電流効率、回収率、電析物の純度を主体的に評価する。
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