研究課題/領域番号 |
23H02013
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石割 文崇 大阪大学, 大学院工学研究科, 講師 (00635807)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ラダーポリマー / 高分子反応 / ミクロ多孔性 / ガス分離膜 |
研究実績の概要 |
主鎖に沿って二本以上の化学結合を有するラダーポリマーは、その合成の困難さゆえ、未開拓領域を多く残している研究領域であり、早急な開拓が求められる。本研究では、これまでに見出してきた反応を含む、ラダーポリマーの主鎖上における骨格編集反応を用い、配座柔軟性DACO含有ラダーポリマーの溶液・固体物性の継続的研究に加え、ラダーポリマーの「再構築」に基づく構造・物性変調や、前例のない動的ならせん状ラダーポリマー・刺激応答性ラダーポリマーの開発を行う。 昨年度の研究では、官能基を有するジアザシクロオクタン誘導体における特異な閉環反応を見出し、その置換基依存性や反応速度の解析などを行った。その検討の過程で、これまでに結晶多形が報告されていなかったトレガー塩基において、水分子を多数内包した、興味深い新たな多形を与えることを発見した。上記に加え、N,N'-ジアシルジアザシクロオクタン含有ラダーポリマーの自立膜作成を行い、そのガス選択透過製を調査し、選択透過性の向上を確認することができた。さらに、ある構造を有するジアザシクロオクタン含有ラダーポリマーの含水状態におけるDSC測定を行ったところ、中間水と呼ばれる特殊な状態に帰属される水分子の存在を確認することができた。これまでに、類似のジアザシクロオクタン骨格を有する多孔性ポリマーにおいて、タンパク質の非特異吸着の抑制能が報告されていた例があったが、この中間水観測結果はその生体適合性を支持している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は目標としている高分子の骨格変換反応の開発や、ガス分離特性の調査を行うことができた。また、ラダーポリマーの中間水発現などの新たな物性に関しても発見することができた。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、DACO誘導体からTB誘導体へと誘導される新しい反応を発見した。今後はその反応機構解明や、ラダーポリマー骨格編集反応への応用を行う。また、骨格にキラリティーを有するDACO含有ラダーポリマーを合成し、そのガス透過測定や、キラル分離膜としての機能を評価する。ガス透過測定は、九大 藤川茂紀 教授らとの共同研究により、そのガス選択透過性の体系的な調査を行う。また、配座柔軟性ラダーポリマーの溶液物性についても京大 井田 准教授と共に調査し、ラダーポリマーの溶液状態のモデル構築を行い、未踏のラダーポリマーの高分子溶液論の開拓にも取り組む。
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