研究実績の概要 |
資源やコストの問題から、リチウムイオン電池に代わる次世代二次電池(ポストリチウムイオン電池)の開発が需要となっている。本研究課題では、そのようなポストリチウムイオン電池として、ナトリウムイオン電池に着目し、それに適した有機正極材料の探索とその電極特性を目的とする研究を行った。 今年度は、そのような有機材料として、水素結合性有機構造体(HOF)を用いた。HOFは、有機分子が水素結合をすることによって形成された多孔性構造体で、分子が規則的に連結された高い結晶性材料である。特に酸化還元部位含有HOFは、資源・環境・コストなどの視点から、次世代二次電池の新規正極材料として大変魅力的である。しかしながら、その正極活物質への応用例は限られているといっても過言ではない。 ここでは、構造異性体を有するテトラチアフルバレン部位含有HOF(PFC-77,78)とトリアジン部位含有HOF(PFC-11,12,13)に着目し、それらを正極活物質とするリチウムイオンおよびナトリウムイオン電池(LIB, SIB)特性を検討するとともに、構造異性体の電極特性への影響を調べた。 その結果、PFC-77とPFC-78 を正極とする LIBのサイクル特性より、200サイクル後の容量保持率を考えると、それぞれのHOFの放電容量はLIBでは23~30%程度保持されており、両者に大きな違いは無かった。組成式当たり2電子の酸化還元反応が起きると考えた理論容量(約78.4 mAh/g)に対して実際に得られた最大容量の比率を考えると、PFC-78が比較的高いと分かった。
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