研究課題/領域番号 |
23H02065
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
薄井 洋行 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (60423240)
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研究分担者 |
坂口 裕樹 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00202086)
道見 康弘 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (50576717)
新田 紀子 高知工科大学, 理工学群, 准教授 (80412443)
田中 俊行 地方独立行政法人鳥取県産業技術センター, 無機材料グループ, 研究員 (30713771)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | ルチル型複合酸化物 / ナトリウムイオン電池 / リチウムイオン電池 / 酸化物系固体電池 / 酸化物系負極材料 |
研究実績の概要 |
資源が豊富で安価なNaを用いたナトリウムイオン電池は,定置用や車載用の電源として有望な蓄電デバイスであり注目を集めている.ただし,Li+よりもサイズが大きいNa+を可逆的に吸蔵できる負極活物質の探索が課題である.これまでに研究代表者はc軸方向に沿った一次元的なNa+拡散経路を有するルチル型TiO2の研究に取り組んできた.その中で,Ti4+よりも大きいNb5+をTiO2にドープすると拡散経路が広がり,負極性能を改善できることを見出してきた.しかしながら,Nbの固溶限界は8 at.%程度であるため,ドープによりこれ以上拡散経路を広げることは困難である.これに対し,NbとTiが規則配列したルチル型Ti-Nb複合酸化物(TiNbO4)はNbを50 at.%含むことでNbドープTiO2に比べてさらに広い拡散経路を有するため,一層の性能改善が期待される.本研究課題では,新しい負極活物質としてルチル型TiNbO4を合成し,その負極特性を評価した. X線回折測定の結果,ゾル-ゲル法で調製したTiNbO4はNb-doped TiO2よりもさらに広いNa+拡散経路を有することを確認した.定電流充放電試験においては,TiO2電極やNb-doped TiO2電極の場合と同様の充放電プロファイルが出現し,TiNbO4電極が可逆的なNa+吸蔵-放出反応を示すことを確かめた.放電容量の充放電サイクル数依存性を評価したところ,TiNbO4電極は270 mA h g-1の放電容量を100サイクルにわたり維持する良好な負極性能を示すことがわかった.これは,TiNbO4が広い拡散経路を有することによりNa+吸蔵時の体積膨張が軽減され,電極の構造を維持できたためであると推察される.以上の結果から,ルチル型構造を有するTiNbO4複合酸化物が有望な新規負極活物質となることを初めて確かめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ナトリウムイオン電池において,ルチル型TiNbO4の可逆的なNa+吸蔵-放出反応を世界で初めて確認し,この材料が有望な負極材料となることを見出した.いち早くこの成果を論文にまとめて原著論文発表を行い(Electrochem. Commun., 155 (2023) 107579.),国内外の研究グループに対して優位性を確保することができたため.また,本研究の知見を反映させた他の酸化物系材料についても特許申請を2件行うことができたため.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に見出した新規負極活物質であるTiNbO4について,結晶性や粒子形状が負極性能に与える影響はまだ詳細に分かっていないため,今後はそれらに関する取り組みを行う.また,ゾル-ゲル法以外の種々の合成方法を検討するとともに,他の複合酸化物の合成も試みる.
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