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2023 年度 実績報告書

濃厚電解液のイオン秩序構造と自由エネルギー描像:電池電極反応への応用

研究課題

研究課題/領域番号 23H02066
配分区分補助金
研究機関山口大学

研究代表者

藤井 健太  山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20432883)

研究分担者 松上 優  熊本高等専門学校, リベラルアーツ系理数グループ, 准教授 (50455177)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード超濃厚電解液 / イオン溶媒和 / 電極界面 / Liイオン電池
研究実績の概要

高濃度のLi塩を溶解した超濃厚電解液が新しい蓄電池電解質として定着しつつある。しかしながら、反応化学種の自由エネルギー的安定性、すなわち、超濃厚電解液中のLiイオンが(希薄電解液に比べて)安定なのか、不安定なのか?という基本事項すら分かっていないのが現状である。本研究では、バルク・電極界面におけるLiイオンの自由エネルギー描像を解明し、これを電池電極反応の理解と制御に応用することを目指す。本年度は、(1)超濃厚電解液のバルク構造およびLiイオン溶媒和、および(2)超濃厚電解液の電極/電解液界面について検討を行い、下記の成果が得られた。
(1)超濃厚電解液のバルク構造およびLiイオン溶媒和: 実験(放射光X線散乱、振動分光測定など)および計算化学的手法(分子動力学(MD)シミュレーション、量子化学計算)により、超濃厚電解液の精密構造解析を実施した。Liイオンの溶存構造(配位数、結合距離、錯体形成)に及ぼす塩濃度依存性、溶媒種依存性を系統的に調べ、超濃厚系に特有な構造特性を明確にした。また、構造特性とイオンダイナミクスの相関関係についても議論を行い、電池特性を左右するイオン輸送特性を明らかにした。
(2)超濃厚電解液の電極/電解液界面: 電極/電解液界面に対してMDシミュレーションを実施し、界面近傍の化学種の局所的な構造・ダイナミクスを解析するための技術を確立した。希薄電解液系および典型的な超濃厚電解液系にこの手法を適用し、界面構造に及ぼす電場効果や塩濃度効果を分子レベルで可視化することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

超濃厚電解液のバルク構造については、Liイオン周りの個別配位数や構造秩序性に与える溶媒種や溶媒構造、塩濃度の効果につ いておおよその傾向を把握することができた。また、電極界面のイオン構造やその電場依存性を調べるために界面MDシミュレーションを導入し、一般的な希薄電解液系およびアセトニトリルを溶媒とする超濃厚電解液系に適用することができた。電極界面近傍におけるイオン種の脱溶媒和挙動やこれに及ぼす電場印加の効果等、電極反応を理解する上で重要な知見が得られつつあり、次年度 以降、更なる展開が期待できる。

今後の研究の推進方策

電極/電解液界面のイオン構造を制御し、電池特性改善につなげるためには、界面構造の電場依存性に加えて、塩濃度依存性や溶媒種依存性を系統的に調べる必要がある。また、界面における電荷移動反応メカニズムを解明し、その挙動を自由エネルギーレベルで特徴づける取り組みが必要となる。今後(R6年度)は、電極反応の活性化エネルギー決定を中心として、構造論とエネルギー論の両輪で反応メカニズムを明らかにしていくとともに、実際の電池特性(充放電特性、電気化学的安定性など)との相関関係を系統的に調べていく予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] A structural study on a specific Li-ion ordered complex in dimethyl carbonate-based dual-cation electrolytes2024

    • 著者名/発表者名
      Chikaoka Yu、Tashiro Tomoya、Sawayama Saki、Kobayashi Ayana、Matsumoto Ayuna、Iwama Etsuro、Naoi Katsuhiko、Fujii Kenta
    • 雑誌名

      Physical Chemistry Chemical Physics

      巻: 26 ページ: 3920~3926

    • DOI

      10.1039/d3cp05526d

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Strategy for Ultrafast Cathode Reaction in Magnesium-Ion Batteries Using BF4 Anion Based Dual-Salt Electrolyte Systems: A Case Study of FePO42023

    • 著者名/発表者名
      Chikaoka Yu、Nakata Naomasa、Fujii Kenta、Sawayama Saki、Ochi Riko、Iwama Etsuro、Okita Naohisa、Harada Yuta、Orikasa Yuki、Naoi Wako、Naoi Katsuhiko
    • 雑誌名

      ACS Applied Energy Materials

      巻: 6 ページ: 4657~4670

    • DOI

      10.1021/acsaem.2c04182

    • 査読あり
  • [学会発表] Li塩含有イオン液体電解液中におけるFSAアニオンのコンフォメーションおよびLiイオン溶媒和特性2024

    • 著者名/発表者名
      澤山沙希、川口翼、池田奈美恵、藤井健太
    • 学会等名
      電気化学会第91回大会
  • [学会発表] 超濃厚LiFSA系電解液に特有な電極反応速度論とそのイオン溶媒和効果2023

    • 著者名/発表者名
      澤山沙希、藤井健太
    • 学会等名
      第64回電池討論会
  • [学会発表] FSA型イオン液体電解液に特有なLiイオン配位構造と電池電極反応メカニズム2023

    • 著者名/発表者名
      澤山沙希、藤井健太
    • 学会等名
      第13回イオン液体討論会
  • [学会発表] 均一高分子網目からなるLiイオン電池用濃厚電解質ゲルのゲル化挙動と電極反応速度論2023

    • 著者名/発表者名
      出口由菜、藤井健太
    • 学会等名
      日本分析化学会第72年会
  • [学会発表] 均一TetraPEG網目と超濃厚電解液を複合化したLiイオン電池用ゲル電解質の電極反応特性2023

    • 著者名/発表者名
      出口由菜、藤井健太
    • 学会等名
      第60回化学関連支部合同九州大会

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公開日: 2024-12-25  

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