研究課題/領域番号 |
23H02112
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田畑 亮 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任講師 (30712294)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 植物栄養学 / 鉄欠乏応答 / ペプチド分子 / 器官間コミュニケーション |
研究実績の概要 |
本研究では、土壌中の「鉄」欠乏に応答した植物の空腹・指令シグナルに着目し、根と葉の間の器官間コミュニケーションの分子メカニズムを明らかにし、これにより、根と葉という離れた器官を連動させ環境に柔軟に適応する植物は、どのように生命機能を生み出し維持しているのかを解明することを目的とした。 これまで、Split-root「鉄」欠乏培養法によるシロイヌナズナ時系列RNA-seq解析から、「葉から根」へ移動して「根」における鉄吸収を促進する指令シグナル候補分子として中分子ペプチドIRON MAN(IMA)を単離してきた。IMA八重変異体(ima8x)では、不均一な鉄欠乏に応答した鉄吸収関連遺伝子の相補的なmRNA発現上昇制御が完全に阻害されていた。シロイヌナズナ接木実験により、このima8xにおける不均一鉄欠乏環境での相補的な遺伝子発現制御の不全は、ima8xの地上部を野生型に置き換えることで回復した。さらに、GFP-IMA融合タンパク質発現個体を使用した接木実験から、IMAの葉から根への移動性が示唆されたため、地上部で発現誘導されたIMAsは地下部へと移動し、まわりに鉄が十分に存在する根において相補的な遺伝子発現応答を引き起こすことが考えられた。加えて、ima8xに対してIMA1とIMA3を回復させたima6x変異体では、不均一な鉄欠乏での相補的な遺伝子発現応答が野生型と同様のレベルにまで回復した。したがって、鉄関連遺伝子の相補的発現制御には、シロイヌナズナが持つ8個のIMAペプチドのうち、特にIMA1とIMA3が重要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土壌中の局所的な鉄欠乏に応答して、「葉から根」へ移動して「根」における鉄吸収を促進する指令シグナル候補分子として中分子ペプチドIRON MAN(IMA)に着目した。IMA八重変異体(ima8x)では、不均一な鉄欠乏に応答した鉄吸収関連遺伝子の相補的なmRNA発現上昇制御が完全に阻害されていた。シロイヌナズナ接木実験により、このima8xにおける不均一鉄欠乏環境での相補的な遺伝子発現制御の不全は、ima8xの地上部を野生型に置き換えることで回復した。さらに、GFP-IMA融合タンパク質発現個体を使用した接木実験から、IMAの葉から根への移動性が示唆されたため、地上部で発現誘導されたIMAsは地下部へと移動し、まわりに鉄が十分に存在する根において相補的な遺伝子発現応答を引き起こすことが考えられた。加えて、ima8xに対してIMA1とIMA3を回復させたima6x変異体では、不均一な鉄欠乏での相補的な遺伝子発現応答が野生型と同様のレベルにまで回復した。したがって、鉄関連遺伝子の相補的発現制御には、シロイヌナズナが持つ8個のIMAペプチドのうち、特にIMA1とIMA3が重要であることが明らかとなった。このように、土壌中の局所的な鉄欠乏に応答した植物の器官間コミュニケーションを介した鉄獲得戦略について、IMAの重要性が明らかになりつつあるため、順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
局所的な鉄欠乏に応答した器官間コミュニケーションの仕組みにおいて、IMAがどのようにして「葉から根」へ移動するかイメージング解析を実施する。また、葉から根へと移動してきたIMAが、どのように鉄輸送体IRT1の転写を活性化するか明らかにするため、質量分析装置を用いた解析により、指令シグナルと細胞内シグナル伝達を繋ぐハブとなる新規分子同定を試み、その制御メカニズムを解明する。
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