研究実績の概要 |
テトロドトキシン(TTX)について:TTXの生合成に関する情報を得るため、TTX類縁体や関連化合物の化学構造を比較することを目的に、各種TTX含有生物より高分解能LCMSを用いて、新規TTX関連化合物を探索した。その結果、フグ中より2種のTTX新規類縁体を見出したので、各種分離用のカラムやレジンを用いて、それらの化合物を単離できた。また、川津らが報告した抗TTXモノクローナル抗体は、TTXの生物間動態の解明に有効な抗体であると考えられる。そのため、ELISAによって、単離した5,6,11-trideoxyTTX, 11-norTTX-6(S)-ol, 11-oxoTTXに対する交差反応性を明らかにし、特異性を評価した。その結果、反応性はTTXを100%とした場合、5,6,11-trideoxyTTX (<2.2%), 11-norTTX-6(S)-ol (<0.3%), 11-oxoTTX (<1.5%)であり、TTXに対する特異性が高いことを確認した。サキシトキシン(STX)について:STXの生合成経路において、酸化の順番に注目し、三環形成後に酸化する経路を推定した。その証明のため、酸化前の三環化合物および関連化合物の12, 12-dideoxy-decarbamoyloxySTX (dd-doSTX), 12beta-deoxy-doSTX, doSTXの三種を、研究協力者の東京農工大学長澤和夫教授の協力により化学合成した。これらの化合物を標品として、有毒藍藻や数種の有毒渦鞭毛藻類に存在するのかどうか探索し、高分解能LC-MS/MSにより、保持時間やMS/MSのパターンが一致するピークをそれぞれ見出し、これらの化合物が存在することを証明した。そのため、これらの化合物が生合成中間体であると考察した。
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