研究課題/領域番号 |
23H02154
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
白川 仁 東北大学, 農学研究科, 教授 (40206280)
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研究分担者 |
大崎 雄介 東北大学, 農学研究科, 准教授 (40509212)
Afifah Zahra・Agista 東北大学, 農学研究科, 助教 (00961872)
何 欣蓉 北海道大学, 保健科学研究院, 特任講師 (50815561)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ビタミンK / 老化 / 健康寿命 |
研究実績の概要 |
ビタミンK(VK)は、プロトロンビンをはじめとした血液凝固因子やオステオカルシンなどの骨タンパク質の活性化(翻訳後修飾)を行うγ-グルタミルカルボキシラーゼの補因子として働き、血液凝固系や骨代謝と密接に関わっている。食事由来のVKは緑色野菜(VK1)や発酵食品、肉類、鶏卵(VK2)などである。摂取されたVKは肝臓や骨のほか、膵臓、脳、腎臓、生殖腺、筋肉などにも分布するが、肝、骨以外の組織での役割は十分に明らかとなっていない。本研究は、大脳、筋肉、腎臓おけるVK、特にVK2のひとつであるメナキノン-4(MK-4)の作用を明らかにして、加齢に伴う疾病に対して本ビタミンが持つ寿命延伸効果を示すことを目的とした。まず、認知症モデルマウス(家族性アルツハイマー病患者の変異型アミロイドβ遺伝子をノックインしたマウス)にコントロール食、VK1およびメナキノン-4添加食を与え、6ヵ月間飼育した。飼育期間中に、Y字迷路試験、受動回避行動試験、水迷路試験を行った。飼育が終了した動物の一部に、VKの摂取状況の違いによる行動変化がみられ、認知能低下への改善効果の可能性が示唆された。また、海馬由来細胞HT-22、筋芽細胞C2C12、腎由来HK2細胞に酸化ストレスを誘導した際の細胞の生存率やミトコンドリア活性に与える影響を解析したところ、メナキノン-4の添加により細胞死の抑制やATP産生の回復が観察された。還元酵素FSP1の阻害剤によってメナキノン-4の効果は消失したことから、還元型のVKが本活性を示すと推定された。さらに、通常マウスにVK欠乏食を給餌し、腸内マイクロバイオームを解析したところ変化がみられ、菌相の違いによる脳機能への影響が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
認知症モデルを用いた脳機能へ与える影響の解析は、全体の3分の2の動物飼育と行動試験の飼育が終了した。現在、残りの飼育、試験を継続している。また、細胞試験においては、酸化ストレス誘導条件、VKの添加量と培養時間などの培養条件が決まった。VKの摂取量の違いによる腸内マイクロバイオームの変化を検出することができた。
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今後の研究の推進方策 |
認知症モデル動物試験については、得られた臓器サンプルを用いて脳の組織像の解析、認知関連遺伝子の発現解析を行う。培養細胞を用いた酸化ストレス誘導の細胞死抑制の機構については、関連する因子に対する阻害剤やRNA干渉などによって解析を進める。さらに、腸内マイクロバイオームの変化についてさらに詳細に解析を進め、脳腸相関を明確にする。
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