研究実績の概要 |
気孔の分化を制御する遺伝子の解析においては、イネPOLAR遺伝子の機能について解析を行った。発現解析の結果、3つのイネPOLAR遺伝子のうちOsPOLAR1はイネ科の気孔に特徴的な副細胞の母細胞に特異的に発現することが明らかになった。一方、OsPOLAR2 は孔辺母細胞を分化すると考えられる未分化な表皮細胞列に特異的に発現し、OsPOLAR3 については特異的な発現パターンは見られなかった。3 つのOsPOLAR 遺伝子の多重変異体を CRISPR/Cas9によるゲノム編集により作出した。その結果、ospolar1/2/3 三重変異体は異常な形状の副細胞を形成することに加えて、気孔列内における細胞の分化パターンに異常を示すことが明らかになった。OsPOLAR1, 2, 3 遺伝子間の機能分化を明らかにするために、それぞれの単独変異体、多重変異体の表現型を観察したところ、ospolar1 単独変異体で副細胞の異常が、ospolar2 単独変異体で細胞の分化パターンに異常を示した。また ospolar1/2 の二重変異体で副細胞の形状異常の頻度が増加した。一方、ospolar3 はいかなる組み合わせでも表現型に変化を与えなかった。これらのことからOsPOLAR1 は副細胞の形成過程に、OsPOLAR2 は気孔列内における細胞の分化パターンの決定と副細胞の形成過程の両方に機能を持つことが示唆された。葉の通気組織分化を制御する遺伝子の解析においては、通気組織の分化予定領域に特異的に発現する転写因子遺伝子について、パラログを含む遺伝子の多重変異体を作成した。その結果、通気組織のサイズに異常が見られる個体が出現した。このことから、これらの遺伝子は通気組織の分化に関与する可能性が示された。
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