研究課題/領域番号 |
23H02194
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉浦 大輔 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (50713913)
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研究分担者 |
岡村 昌樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中日本農業研究センター, 主任研究員 (00757908)
荒井 裕見子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, 上級研究員 (50547726)
宮沢 良行 九州大学, キャンパス計画室, 学術推進専門員 (80467943)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | LAI / マイクロコントローラー / 近赤外分光 / Arduino / ESP32 |
研究実績の概要 |
イネのさらなる多収化のためには、群落レベルのソース・シンク能とその気象応答を正確に理解する必要がある。これまでの研究から、多収イネ品種北陸193号において、登熟期後期にLAI (葉面積指数) を高く維持することで、物質生産性も高く維持され、このことが高収量に大きく寄与していることが示唆された。一方で既存のLAIの計測システムではハイスループットなLAI計測が困難であった。そこで本年度は、マイクロコントローラー (Arduino、ESP32) 制御型の光学センサーによる計測システムを開発し、Wi-Fi経由で日本多地点のイネ群落LAIの連続・非破壊・リアルタイムモニタリング可能とすることを目的とした。
愛知県長久手市および新潟県上越市の圃場で栽培した北陸193号の群落内に開発した光学センサーを設置し、データをWi-Fi経由でリアルタイムモニタリング可能にした。本システムを小型ソーラーパネルで運用することで、5ヶ月間、5分間隔で計測・データ送信を行うことができた。移植から収穫まで約2週間おきに破壊的にLAIを計測し、LAIの実測値と光学センサーの計測値の関係に十分高い相関関係が得られた。これらの結果から、本システムを、イネ群落のLAIをローコスト・ハイスループットにリアルタイムモニタリング可能なシステムとして確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究提案において、LAI(葉面積指数)のリアルタイムモニタリングは、作物の生育状況や水消費量を評価する上で極めて重要な要素である。従来、LAIの計測には高価な機器や人手を必要であったが、本研究では、マイクロコントローラーとローコストな分光センサーを組み合わせることで、LAIをリアルタイムかつ高精度にモニタリングできるシステムの開発に成功した。これにより、様々な作物のLAIの経時変化を容易に把握できるようになり、品種間差や施肥条件間差も捉えられることが期待できる。 さらに、本研究ではマイクロコントローラー制御型のサップフローセンサーの開発も完了した。これにより、従来困難であった個葉~個体レベルでの蒸散速度の連続計測が可能となり、特にイネの多収品種における登熟期間中の蒸散速度とその環境応答に関する詳細なデータ取得が可能となった。次年度は、サップフローセンサーを用いて出穂後から収穫までの多収イネの蒸散データの取得に挑戦する。
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今後の研究の推進方策 |
イネ多収品種北陸193号を用いて、残り2年の研究期間中、愛知県長久手市および長野県須坂市において栽培試験を実施する。 具体的には、穂揃期以降に葉面積指数(LAI)に差が生じるような施肥条件を設定し、LAIの低下が収量に与える影響を詳細に調査する。これまでの研究から、高日射かつ気温の低い長野県において、LAIを高く維持することが高収量につながる可能性が示唆されており、この可能性を検証するために、新型光学センサーを用いてLAIを連続的かつ非破壊的に計測する。さらにサップフローセンサーを用いて個体レベルの蒸散量をリアルタイムモニタリングすることで、登熟期後半までイネの葉が光合成活性を維持しているのかを推定する。
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