研究課題/領域番号 |
23H02202
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西山 総一郎 京都大学, 農学研究科, 助教 (50827566)
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研究分担者 |
尾上 典之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 主任研究員 (50613121)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 果樹 / 育種 / 倍数性 / 二次代謝 / ゲノミクス |
研究実績の概要 |
本研究は、カキの特徴である渋味成分プロアントシアニジン(PA)の果実への多量蓄積に関する遺伝育種研究である。本年度の取り組みは以下の4つにまとめられる。 1. 日本タイプ完全甘ガキ性を制御する候補遺伝子を同定した。これまでに構築した渋ガキ品種「太天」のゲノムアセンブルデータに加えてIso-seqデータを解析し、ハプロタイプ配列間の比較により決定多型の候補を同定した。候補遺伝子の機能解析に着手した。また多様な遺伝資源と育種集団のフェノタイピングと材料収集を進めた。 2. 中国タイプ完全甘ガキ性の分離集団 (N=57) を用いて、甘渋性別にbulk sequenceを取得した。polyploid QTL-seqを行い、決定遺伝子座の座乗染色体を特定できたが、ピークがブロードであり、染色体上の座乗位置を正確に狭めることはできなかった。 3. 完全甘ガキの遺伝子型を持つにも関わらず強い渋味を示す個体(渋残り個体)について、PA蓄積を詳細に調査し、完全甘ガキよりPA含量が有意に高いこと、タンニン細胞の数やサイズに特徴があること、WRKY44, QUIRKY, Cyclin D3等の発現量に特徴があり共通して完全甘ガキと異なるパターンを示すことなどを明らかにした。育種集団中に現れる「渋残り」形質を示す個体を多数収集し、更なるサンプリングを進めた。 4. 甘渋性分離集団6系統111個体の果実糖度を調査し、日本タイプ・中国タイプに関わらず、甘渋性と糖度が遺伝的に関連する可能性を示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体を通して、サンプル収集やデータ解析については順調に進展している。日本タイプ完全甘ガキ性については、ゲノム解読の進展から、決定多型候補の同定まで至っている。中国タイプについてもおおまかに座乗領域を特定できており、分子マーカー開発等に向けては有益な知見が得られている。さらに、カキ果実内における糖代謝の解析にも取り組み、代謝フローの観点からも展開が考えられる新しい知見が得られている。一方で、候補遺伝子の機能解析はやや難航しており、一過性発現系では安定した発現が得られず、分子機能の特定には至っていない。この状況を踏まえ、特に分子遺伝学関連の実験計画を練り直している状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的の一つである日本タイプ完全甘ガキ性の決定遺伝子については、これまでの結果を考慮し、カキ属やモデル植物を対象とした形質転換系により分子機能の特定を進めるとともに、タンパク質としての機能に着目した実験も新たに展開する。同時に、順遺伝学的な観点からも、アレル間の多型性やアレル量に着目した実験を計画している。中国タイプの完全甘ガキ性については、これまでに特定した連鎖多型を活用し、選抜マーカーのアップデートを進めるとともに、新たな分離集団を用いて決定遺伝子座の特定を進める。「渋残り」形質については、これまでに収集した多様な育種系統のサンプルを活用し、高PA蓄積をもたらすメカニズムの共通性について解析する。さらに、高PA蓄積の鍵となるタンニン細胞の機能と分化過程の解明に向けて、レポーターアッセイやシングルセル解析等の実験を新たに計画している。また、これまでに特定した糖代謝とPA蓄積をリンクする因子についても、モデル植物等を用いた形質転換系によりその機能解析に着手することを予定している。
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