研究課題/領域番号 |
23H02242
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
高橋 洋 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (90399650)
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研究分担者 |
柿岡 諒 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 特命助教 (40712055)
武藤 望生 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (50724267)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 種分化 / 生殖隔離 / 異種間浸透 |
研究実績の概要 |
本研究は,日本近海で漁獲されるトラフグ属魚類およびブリ属魚類の自然種間交雑個体(雑種)を定量的にサンプリングし,そのゲノム構造を両親種と比較することにより,雑種が両親種の遺伝変異をゲノム全体にわたりランダムに受け継いでいるか否かを検証することを目的とする。2023年はトラフグ属のショウサイフグとゴマフグの雑種の定量的なサンプリングを実施し,得られた4551個体について6座の種特異的SNPsのジェノタイピングにより種・雑種判別したところ,雑種F1,ショウサイフグ方向への戻し交雑(BCsny),雑種第2世代(F2)がそれぞれ675,132,2個体含まれていた。また,ゲノムワイドにSNPを検出し,BCsnyについて詳細に雑種クラス判別を行ったところ,16個体が3世代目以降の戻し交雑個体と推定された。以上より,雑種にかかる強い自然選択圧と,それをすり抜けて一部のゲノム領域がゴマフグからショウサイフグ方向に異種間浸透している可能性が示唆された。また,BCsnyについてゴマフグゲノムがゲノム全体にわたりランダムに受け継がれているかを検証したところ,戻し交雑1世代目では少なくともすべての染色体にゴマフグゲノムが受け継がれており,染色体領域による異種ゲノムの浸透のしやすさにゲノム領域間で明瞭な違いは見られなかった。上記の組み合わせに加えて,トラフグ属魚類のトラフグとマフグ,ブリ属魚類のブリとヒラマサについても雑種の定量的なサンプリングを行ったが,後者の組み合わせに関しては漁獲量が少なく,またサンプル購入予算も不足しており,ほとんどサンプルが得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トラフグ属魚類のショウサイフグとゴマフグについては今年度の目標である定量的なサンプリング,雑種クラス判別まで実施できた。また,2世代目以降の雑種のゲノム構造解析にも着手できており,概ね順調に進展していると考えられる。トラフグ属魚類のトラフグとマフグについては,東京湾口の産卵群から定量的なサンプリング,雑種クラス判別まで実施できたが,まだ2世代目以降の雑種の数が少なく,次年度以降もサンプリングを継続する予定である。一方,ブリ属魚類の雑種については,漁獲量の少なさや,予算額の減少により,本研究期間中の実施は不可能であり,次年度以降はトラフグ属魚類に予算などを集中することで対応する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
トラフグ属魚類のショウサイフグとゴマフグの2世代目以降の雑種について,引き続きゲノム構造の分析を進める。また,詳細なゲノム構造の分析にために,ゲノムワイドに検出したSNPsの情報に基づく雑種クラス判別によって判別された2世代目以降の雑種について,HackFlex法により安価に全ゲノムシーケンス用ライブラリを作成し,平均デプスX10程度で全ゲノムシーケンスを行う。検出された多数のSNPsの情報に基づき,染色体領域による異種ゲノムの浸透のしやすさにゲノム領域間で違いが見られるかどうかを検証するとともに,より厚く読んだシーケンスに基づく両親種のゲノムシーケンスに基づき,両親種間の過去の異種間浸透について詳細に調べる。
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