研究課題/領域番号 |
23H02249
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
小池 伸介 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40514865)
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研究分担者 |
後藤 優介 ミュージアムパーク茨城県自然博物館, 資料課(兼務), 学芸員 (20574312)
山崎 晃司 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (40568424)
姉崎 智子 群馬県立自然史博物館, その他部局等, 研究員(移行) (50379012)
深澤 圭太 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主任研究員 (90617101)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | ツキノワグマ / 結実豊凶 / 個体群動態 / 繁殖パラメータ |
研究実績の概要 |
本年度は2005年から2019年にかけて、群馬県・栃木県・長野県において有害駆除などで捕殺され、各県の試験研究機関が回収したメスのクマの歯(132個体)と子宮(88個体)の標本を材料として用いて繁殖パラメータの算出を行った。まず、歯の年輪幅から、各個体が生まれてから死ぬまでの間に育児に成功した年齢を推定し、その間隔を測定した。また、子宮の胎盤痕から一度に出産した子の数(産子数)を推定するとともに、胎盤痕が確認された個体の年齢から出産した最低年齢と最高年齢を求めた。解析の結果、初めて育児に成功した年齢は平均で5.44歳、育児が成功する年の間隔は2.38年で、出産1回当たりの産子数は1.58頭で、出産は2歳から20歳の間で確認さた。 初育児成功年齢は、多くの個体が性成熟すると考えられている年齢(4歳)と近い数値を示しており、性成熟後間もなく子を産む母親でも育児に成功する確率が高いことを意味している。さらに、育児に成功する年の間隔は、一般的に母親と子の一緒にいる期間が1.5年と言われているものの、それよりも1年長く推定された。つまり、母親は子別れしてもすぐに繁殖に成功するとは限らない可能性が考えられた。また、出産1回当たりの産子数(1.58頭)は他の地域での先行研究と近い値を示し、1回の出産でおおよそ1頭ないし2頭を出産していることが明らかになった。 さらに、2003年から2021年にかけて研究目的で学術捕獲されたメスのクマの情報(1歳~21歳の43個体)を用い、捕獲された記録や死亡した記録から年間の自然死亡率と人為死亡率を求めた。解析の結果、自然死亡率は10.8%、人為死亡率は0.5%と推定され、生後半年までの死亡率は23.5%であった。この結果より、1歳以上の自然死亡率は0歳の子の死亡率よりも低く、生後半年間は死亡リスクが高いことが数値的にも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り繁殖パラメータの算出を終えるとともに、学術捕獲でも予定通りの捕獲が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた繁殖パラメータをもとに個体群動態の推定を行うとともに、学術捕獲を継続する。
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