研究課題/領域番号 |
23H02273
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
半 智史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40627709)
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研究分担者 |
船田 良 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20192734)
粟野 達也 京都大学, 農学研究科, 助教 (40324660)
高田 直樹 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 森林バイオ研究センター, 主任研究員 等 (90605544)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 放射柔細胞 / 細胞死 / 自己分解酵素 / 心材形成 / ポプラ / ゲノム編集 / 免疫標識 |
研究実績の概要 |
本研究では、放射柔細胞の細胞死過程における自己分解酵素の挙動に着目した研究を進めることにより、デンプン中への自己分解酵素の長期間の蓄積という細胞死プロセスが存在するのかどうかについて細胞生物学的アプローチにより明らかにする。最終的には、樹木特有の長命細胞である放射柔細胞の細胞死発現機構を詳細に理解することを通じて、心材形成機構に関する新しいモデルを世界に先駆けて構築する。 本年度は、自己分解酵素のデンプン中への蓄積に関する解析を実施した。ドロノキ(Populus suaveolens) 3 個体を供試木として、辺材から心材までを含むコアサンプルを採取し、システインプロテアーゼの一種であるRD21 に対する抗体とAlexa Fluor 488で標識した二次抗体を用いてRD21の局在を明らかにした。抗RD21標識の結果、すべての試料において辺材中で顆粒状の標識および細胞膜付近での標識が観察された。6月、11月、4月試料では、辺材外側で多く観察された顆粒状の標識は移行材にかけて減少していた。2月試料では顆粒状の標識はほとんど観察されなかった。これら免疫標識を行った切片をヨウ素ヨウ化カリウム染色したところ、染色されたデンプン粒と蛍光標識されたRD21の位置が一致したことからRD21はデンプン粒に局在していると考えられる。以上の結果から、1年を通して、放射柔細胞内にRD21が存在すること、顆粒状の標識は季節、辺材の部位によりその量が変動すること、細胞膜付近の標識は季節により変動しないことが明らかになった。加えて、自己分解酵素の遺伝子の発現を制御した組換えポプラを作製し、解析のため育成を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射柔細胞の細胞死制御機構を明らかにする上で、自己分解酵素のデンプン中への蓄積の季節変化を明らかにすることは重要である。本年度はドロノキ放射柔細胞における自己分解酵素のデンプン中への蓄積に関する解析を実施し、システインプロテアーゼの一種であるRD21の辺材組織内および細胞内の局在の季節変化を明らかにできた。加えて、自己分解酵素の遺伝子の発現を制御した組換えポプラの作製に成功しており、現在は解析のため育成を続けている。 上記の理由から、現在までの進捗状況についておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、自己分解酵素のデンプン中への蓄積に関する解析を蛍光顕微鏡を用いて実施したため、今後は透過電子顕微鏡によるより詳細な細胞内局在についての解析を進める。また、辺材中において自己分解酵素の活性化がいつどこで起こるのかについて解析を実施する。さらに、自己分解酵素の遺伝子の発現を制御した組換えポプラを用いて、自己分解酵素の機能解析を実施する。
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