研究課題/領域番号 |
23H02294
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
足立 真佐雄 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (70274363)
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研究分担者 |
内田 肇 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 研究員 (50805132)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | シガテラ中毒 |
研究実績の概要 |
本研究において、新奇なCTXs産生微細藻を選抜可能な抗CTXs抗体を用いた間接蛍光抗体法(IIF)を開発しようとした。それに先立ち、まず渦鞭毛藻Gambierdiscus silvaeと珪藻をモデル生物として用いた。抗体をこれらの微細藻の細胞内に透過させるために、界面活性剤(Triton X-100)を0.2~10%となるように添加した細胞を調製し、これを抗アクチン抗体を用いたIIFに供した。その結果、その添加濃度を高くするほどアクチン由来の蛍光量が増加した。次に、同様に様々な濃度のTriton X-100により処理したG. polynesiensis細胞を、抗CTXs抗体を用いたIIFに供した結果、Triton X-100を5%添加時にCTXs由来の蛍光量が最も高くなった。このことから、本法を用いることにより、新奇なCTXs産生微細藻を選抜可能であると考えられた。 また、以前に行われたメタバーコーディングにより、本邦沿岸域にその存在が示唆されている複数のGambierdiscus属新奇系統型に関して、これらがCTXsを産生し中毒を引き起こしている可能性が考えられているが、これらの培養株は未確立である。そこで、本研究では新奇系統型の培養株の確立に向けて、本属藻の付着基盤となる海藻に由来する抽出液を調製し、この添加が本属藻の増殖を促進させるか検討した。その結果、海藻の1種であるガラガラ抽出画分を添加した場合、G. silvae株および G. scabrosus株の収量は非添加区のそれらより有意に高かった。よって、本抽出液は高効率な本属藻の培養株確立に有用と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、CTXs 産生微生物を検出可能な間接蛍光抗体法の開発を目指して、本法における細胞の固定法や抗体の細胞膜透過条件を最適化することを目標としていたが、いずれの条件も最適化することに成功し、当該手法を開発することが出来た。それに加え、Gambierdiscus属藻の付着基盤である紅藻の1種であるガラガラの抽出液は、Gambierdiscus属藻の増殖を促進することが判明したことから、本抽出液は高効率な本属藻の培養株確立に有用と考えられたことから、概ね計画通り研究が進捗したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度に開発した間接蛍光抗体法により得られる蛍光輝度の更なる向上を図ると同時に、本法を現場試料に適用する。その際、研究協力者・山下により、シガテラが高頻度で発生する石垣島周辺海域において、多数の海藻試料を採取して、これらを用いる。これにより、CTXs を産生する可能性を有する微生物を検索し、その形態観察を行う。これにより解明した形態特徴に基づき、当該微生物の生細胞を現場試料より単離する。これらの細胞が検出された時の現場環境条件を解析し、本条件を研究室内で再現しながら、さらに海藻抽出液も添加して、高効率にその培養株の確立を図る。得られた培養株について、その形態特徴や分子系統学的情報に基づき種同定を行う。さらに、研究分担者の内田による液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置(LC-MS/MS)を用いた分析により、CTXs産生能を確認する。これにより、新規CTXs産生生物を獲得する。これが獲得出来た場合は、その増殖ならびに毒産生特性について検討する。
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