研究課題/領域番号 |
23H02312
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
瀧澤 文雄 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (60822913)
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研究分担者 |
末武 弘章 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (00334326)
柴崎 康宏 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (30750674)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 魚類 / ヘルパーT細胞 / CD4 / 粘膜免疫 |
研究実績の概要 |
養殖魚の魚病対策として、免疫系を活用して感染症を予防するワクチンが用いられている。ワクチンはT細胞やB細胞などのリンパ球による免疫記憶を利用した予防法である。そのため、リンパ球の機能や活性化機構を理解することが効果的なワクチンの開発や評価法につながる。ヘルパーT細胞は免疫系の制御を担う白血球であり、CD4分子がヘルパーT細胞のマーカーとして用いられている。ヒトなどの哺乳類ではCD4分子は1種類しか存在しないが、魚類では2種類のCD4分子(CD4-1、CD4-2)が存在し、「CD4-1+/CD4-2+(CD4両陽性)Th細胞」と「CD4-2+ Th細胞」の2種類のTh細胞がすることが分かっている。また、魚種によってはマクロファージがCD4-1分子を発現することも知られている。本研究では、申請グループによりこれらTh細胞およびB細胞の検出・解析法が整備されているニジマスをモデル動物として、CD4-1+/CD4-2+両陽性Th細胞とCD4-2+ Th細胞の機能の違いおよび組織間における性状の差異を調べ、粘膜組織におけるTh細胞の役割を明らかにする。 2023年度は、動物種により異なる数で存在するCD4遺伝子の進化について調べ、CD4遺伝子が存在しないと考えられていたサメなどの軟骨魚類におけるCD4およびLAG-3遺伝子の発見に成功した。また、ポリプテルス、チョウザメ、ガーなどの古代魚では、真骨魚類と同様に、2種類のCD4遺伝子が存在することを発見し、CD4について進化学的に新たな知見をもたらした。また、CD4両陽性Th細胞とCD4-2陽性Th細胞の粘膜組織における割合に関する検出系を確立し、今後詳細な性状解析を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CD4遺伝子の進化について調べ、CD4遺伝子が存在しないと報告されていたサメなどの軟骨魚類においてCD4およびLAG-3遺伝子が存在することを見出した。また、古代魚であるポリプテルス、チョウザメ、ガーなどの魚においては2種類のCD4遺伝子が存在することを発見し、ニジマスなどの真骨魚類と同様であることを明らかにした。また、ニジマスの粘膜組織におけるCD4両陽性Th細胞とCD4-2陽性Th細胞の割合を調べ、基本的な性状を調べることを可能にした。以上から、計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ニジマスのCD4両陽性Th細胞とCD4-2陽性Th細胞についてトランスクリプトーム解析などを実施し、詳細な活性化機構や機能について調べていく。また、他魚種のCD4の発現様式なども調べていき、魚類のTh細胞の一般的な性状を調べていく。
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