研究課題/領域番号 |
23H02333
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
長峯 邦明 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 准教授 (00551540)
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研究分担者 |
小原 裕三 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (20354045)
関根 智仁 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 准教授 (20805634)
松井 弘之 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 教授 (80707357)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | バイオセンサ / 農作物 / 非破壊 |
研究実績の概要 |
初年度の研究は、3つの植物体内情報((1)体内化学成分、(2)生体電気インピーダンス、(3)蒸散量)を非破壊連続計測するためのセンサデバイスの基本動作原理の検証に注力した。(1)生体内化学成分の定量は、葉に貼付したハイドロゲルによる独自の非破壊的抽出技術を基に進めた。これまで使用してきた寒天ハイドロゲルはゲルの硬さと親水性・水溶媒ゆえに、葉への密着・固定と長期使用時のゲルの乾燥に課題があった。今年度は柔軟性(密着性)と生体親和性に優れたポリビニルアルコール(PVA)を用いた抽出を検討した。その結果、寒天ハイドロゲルと比較し葉への密着性が向上し、葉内化学成分の抽出量が増加した。また、密着性の更なる向上を目指し両親媒性溶媒をゲルと葉の界面に塗布したところ、葉内化学成分の抽出量がさらに増加することが分かった。ゲル貼付後の葉の成長から、この操作の植物毒性が低いことも分かった。(2)生体電気インピーダンス計測デバイスについては、4株または4部位の電気インピーダンス計測の連続計測が可能な回路システムを構築した。また、電気インピーダンス計測よりも植物へのストレスが低い電位差計測の連続測定システムの開発に着手した。(3)の葉蒸散量計測デバイスは、多孔質セルロースナノファイバ(CNF)/カーボン複合膜の構築に向けた乾湿層の材料選定とデバイス作製、および特性評価を行った。特に、含有カーボン材料の添加量最適化に注目し、デバイスの電気的安定性向上に注力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究は、3つの植物体内情報((1)体内化学成分、(2)生体電気インピーダンス、(3)蒸散量)を非破壊連続計測するためのセンサデバイスの基本動作原理の検証に注力した。(1)生体内化学成分の定量は、葉に貼付したハイドロゲルによる独自の非破壊的抽出技術を基に進めた。これまで使用してきた寒天ハイドロゲルはゲルの硬さと親水性・水溶媒ゆえに、葉への密着・固定と長期使用時のゲルの乾燥に課題があった。今年度は柔軟性(密着性)と生体親和性に優れたポリビニルアルコール(PVA)を用いた抽出を検討した。その結果、寒天ハイドロゲルと比較し葉への密着性が向上し、葉内クロロゲン酸の抽出量が増加した。また、密着性の更なる向上を目指し両親媒性溶媒をゲルと葉の界面に塗布したところ、葉内クロロゲン酸の抽出量がさらに増加することが分かった。ゲル貼付後の葉の成長から、この操作の植物毒性が低いことも分かった。(2)生体電気インピーダンス計測については、4株または4部位の電気インピーダンス計測の連続計測が可能な回路システムを構築した。また、電気インピーダンス計測よりも植物へのストレスが低い電位差計測の連続測定システムの開発に着手した。(3)の葉蒸散量センサデバイスは、多孔質セルロースナノファイバ(CNF)/カーボン複合膜の構築に向けた乾湿層の材料選定とデバイス作製、および特性評価を行った。特に、含有カーボン材料の添加量最適化に注目し、デバイスの電気的安定性向上に注力した。以上より、これまでの研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究は、3つの植物体内情報((1)体内化学成分、(2)生体電気インピーダンス、(3)蒸散量)を非破壊連続計測するためのセンサデバイスの基本動作原理を継続しながら、測定対象であるモデル農作物トマトの農薬処理モデルの構築に注力する。デバイス(1)は、PVAゲルを用いた葉内成分の抽出効率とその再現性を定量する。具体的には、ゲル内と葉内のクロロゲン酸を定量し、その比率から抽出効率を算出する。抽出実験を繰り返し実施し、その抽出効率の再現性を評価する。グリセロールやTritonX100など両親媒性かつ植物安全性成分の添加が抽出効率に与える影響を調べる。(2)の生体電気インピーダンス計測デバイスは、初年度に開発したシステムを用いて実際に植物の連続電気計測を実施する。電気インピーダンスの結果については等価回路モデルに基づいて解析を行い、電位差計測に関しては照度・温度・湿度・蒸散量との相関を調べる。(3)の葉蒸散量センサデバイスは、蒸散量計のウェアラブル化に向けた、デバイスと葉界面の接着法を検討する。また、従来技術で得られた蒸散量絶対値との比較から、本デバイスの優位性評価も継続的に実施する。測定対象のトマトは、薬効が既知の農薬で処理し、既知の生体反応(見た目の形状変化)を確認しながらモデル系の構築を目指す。
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