研究課題
マレック病ウイルス(MDV)の病原性進化の分子機構を明らかにして新規防除法を確立するために、MDVの病原性に最も重要なMeqについて、挿入や欠損を含むMeqアイソフォームを導入した組換えMDVを作出して、MDVの病原性発現機構を明らかにすることを目的として実施した。これまでMeqにおける挿入配列が病原性を増強することを明らかにしたが、その詳細について転写活性化能やmeq遺伝子をL-meq遺伝子に置換した組換えMDV(rMDV_L-Meq)を用いた感染実験等で検討した。L-MeqはMeqに比べ高い転写活性化能を示し、rMDV_Meq感染鶏群と比較して、rMDV_L-Meq感染鶏群ではがん関連因子の発現や末梢血におけるCD4+T細胞や制御性T細胞の増加が早期に認められた。一方で腫瘍病変部での発現遺伝子には両群に有意な差は認められなかった。以上よりMeqの挿入配列は、転写活性化能を増強させ早期に病態を形成させることが示唆された。当研究室では、野外株で欠損配列を持つmeq遺伝子(S-meq遺伝子)の同定・性状解析を報告したが、2022年に過去に報告例のない欠損配列を持つmeq遺伝子が同定されたため、その性状について解析を行なった。検出されたS-meq遺伝子よりも小さく(VS-meq遺伝子)、meq遺伝子と比べて転写活性化調節領域内に192bpの欠損が認められた。またMDV強毒株であるRB-1B株のMeqの配列と比べて、欠損以外に2箇所のアミノ酸配列の相違が認められた。RB-1B MeqとVS-Meqの転写活性化能に差は認められなかったが、欠損以外のアミノ酸配列をそろえたところ、VS-Meqの転写活性化能はRB-1B Meqより有意に高く、VS-Meqの欠損配列が転写活性化能を増加させることが示された。今後、組換えMDVを用いた感染実験により病原性への影響を調査する必要がある。
2: おおむね順調に進展している
初年度に、国内で報告されているmeq遺伝子の多型、S-meqやVS-meqの転写活性化能への影響や組換えウイルスを用いた感染実験により、病原性への影響を解析することができ、これらのmeq遺伝子の多型のMDVの病原性への影響について、新たな治験を得ることができた。現在、VS-meqを有する組換えMDV(rMDV_VS-Meq)を作出中であり、今後、そのMDVの病原性への影響を詳細に解析することが予定されている。
国内で検出されたmeq遺伝子の多型がMDVの病原性にどのような影響を及ぼすかの善用を解明するために、種々の多型を組み込んだ組換えMDV(rMDV_VS-Meq、rMDV_S-Meq、及びrMDV_L-Meq)を作出して実験感染による詳細な解析を実施する。また病原性に関連する免疫応答因子などの宿主因子を網羅的に解析する予定であり、RNA-seq等による解析や腫瘍化の標的細胞のフローサイトメトリー解析も実施する。この間、さらに国内における疫学調査も継続して実施し、国内におけるMDVの病原性変化などをモニタリングする。
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Veterinary Sciences
巻: 11 ページ: 43
10.3390/vetsci11010043