研究課題/領域番号 |
23H02410
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
茶谷 悠平 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (30794383)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | リボソーム / 翻訳 / タンパク質合成 / 新生ポリペプチド鎖 / 翻訳伸長因子 |
研究実績の概要 |
新生ポリペプチド鎖(新生鎖)によるリボソーム機能制御の全容を解明すべく、1. 負電荷アミノ酸によるリボソーム不安定化現象の分子機構解明、2. 新生鎖によって翻訳異常を引き起こしたリボソームに作用する翻訳因子の解析、を実施した。項目1については無細胞翻訳系を用いた解析から、リボソーム不安定化は二段階の反応として進行することを明らかとした。まずリボソーム複合体の構造変化が起こり、この異常な状態のリボソームにribosome recycling factor (RRF)などが作用し、複合体の解離を引き起こすことで、翻訳が途上終結することが明らかとなった。 第二に、生物に広く保存された翻訳伸長因子ABCFタンパク質について検討を行った。過去の解析から、ABCFタンパク質は抗生物質によって停滞したリボソームの解放に寄与すると考えられていた。しかし大腸菌に保持される4種のABCFタンパク質は、新生鎖によって引き起こされるさまざまな翻訳異常を抑制することが我々の解析から明らかとなった。4種のABCFはそれぞれEttA: 翻訳開始直後のリボソーム不安定化、YbiT: 負電荷アミノ酸依存のリボソーム不安定化および正電荷アミノ酸依存の翻訳停滞、Uup: プロリン連続配列による翻訳停滞、YheS: 翻訳停止配列SecMにそれぞれ特異的に作用することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新生鎖による翻訳制御の一種であるIRD現象について、その作動に係る様々なパラメーターの同定に成功した。今後これらの情報を活用することで、リボソーム複合体不安定化の現場が活写可能になったものと考えている。 また新生鎖による様々な翻訳制御に干渉できる新規翻訳因子ABCFタンパク質の機能同定に成功し、翻訳制御の全体像を把握するうえで重要な糸口を掴む事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
新生鎖による翻訳制御をより詳細に理解するため、クライオ電子顕微鏡構造観察による分子メカニズムの解明を進めていく。その第一弾として、大腸菌で新規に同定された翻訳停止配列の構造解析を進め、過去に同定済みの翻訳停止配列との違い、共通項をあぶり出す。以上の解析から、翻訳プロセスの各ステップで新生鎖がどのような影響、機能を持つか、体系的な理解を目指して解析を進める。
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