研究実績の概要 |
本研究は、光合成の光捕集機構に関与する集光性色素タンパク質(LHC)の分子集合機構の解明を目的とする。LHCの遺伝子数が少ないモデル生物を使用し、野生株やLHC欠損株からPSI-LHCを精製し、機能構造研究を実施する。遺伝子欠損させたLHCの代わりに他のLHCが結合するのか、もしくは何も結合しないのか、LHCの結合制御に関する分子基盤を得る。 既に報告した論文(Nagao et al., 2023 Nature Communications)では、6個のLHCサブユニットのうち、3個が未同定のまま残っている。当該年度では、6個すべてのLHCサブユニットを同定するために、野生株からのPSI-LHC超複合体のクライオ電子顕微鏡による撮影を行った。精製条件やグリッド作成条件を検討したが、未同定サブユニットの同定には至らなかった。 当該年度では、4つのLHC遺伝子(isiA1, isiA2, isiA3, isiA5)のうち、isiA1とisiA2それぞれの遺伝子欠損株を分析した。isiA2において、mRNAレベルではisiA2の発現が確認されず、他の3つの遺伝子の発現は検出された。この株からPSI-LHCを精製し、クライオ電子顕微鏡による構造解析を実施したが、IsiAタンパク質は一切見られなかった。生化学分析からもIsiAタンパク質が確認できなかったため、isiA2遺伝子の欠損ではIsiAタンパク質の翻訳や分子集合に影響を与えているのかもしれない。 isiA1遺伝子の欠損株を分析した。この株からPSI-LHCを精製したところ、IsiA2, IsiA3が検出された。isiA5はisiA1とオペロンを形成しているため、isiA1欠損の影響を受けて発現が低下した。
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