研究課題/領域番号 |
23H02425
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
楯 真一 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 教授 (20216998)
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研究分担者 |
安田 恭大 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (40816344)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 液液相分離 / 天然変性タンパク質 / NMR / B型肝炎ウイルス |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス内殻タンパク質HBcに物理的に結合するとして同定されたタンパク質CPSF6のHBc結合部位を同定した.CPSF6のC末端部は液液相分離を誘導する天然変性領域であるが、その領域のN末端部にある100残基程度の領域にはヘリックス構造を形成する領域があることを見いだした.当該領域のNMRシグナル帰属を完了して,HBcとの相互作用部位を特定した.当該ヘリックス構造部には,温度,イオン強度,pHによりNMR信号が敏感に変化する構造が不安定な領域があることみつかった.HBcはこの構造不安定な領域に特異的に結合していることが分かった. B型肝炎ウイルスに感染した細胞核内で,HBcとCPSF6が共局在することを免疫染色により確認した.また,核内で形成されるCPSF6は核スペックルのマーカーであるSRSF2とも共局在することが確認できた.この結果から,CPSF6は核スペックルの中で顆粒体として存在すると考えられる.今回は,蛍光タンパク質と融合したCPSF6を安定に発現する細胞を用いて確認した.一方で,蛍光タンパク質を融合したCPSF6を外部から導入して同様の実験を試みたが今のところ,HBcとの核内共存を観測できていない.B型肝炎ウイルスの感染により,核内顆粒体内部でどのようなタンパク質成分の変化が生じるかをプロテオミクスにより解析するために,引き続き外部から導入した標識CPSF6遺伝子産物の核内でのHBcとの局在が観測できるように実験手法を工夫する.なお,Halo-tagを用いた細胞内顆粒中でのプロテオミクス解析技術は,ストレス顆粒を用いた系で完成している. B型肝炎ウイルスのゲノムになるpgRNAが細胞核内で形成されるCPSF6顆粒中に濃縮されることを検知するためのプローブデザインを開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CPSF6のHBc認識領域の同定については,予想よりも相互作用強度が弱かったために難航したが,最終的には過渡的に立体構造を形成する領域が関与することをNMRにより同定できた.今後は,この領域を中心に原子分解能ででHBc認識機構を解明する. Halo-tag標識タンパク質を用いて,光照射により標識タンパク質に対して空間的に近接するタンパク質同定する技術を確立した.実験が容易なストレス顆粒形成に係わるタンパク質で検証を行い,時間と共に変化する顆粒内でのタンパク質簡相互作用変化の観測に成功している.Halo-tag標識したCPSF6を細胞内に導入して,B型肝炎ウイルス感染から時系列的にどのように顆粒内部でのタンパク質間相互作用が変化するかを観測する技術を作りつつある.
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今後の研究の推進方策 |
CPSF6の過渡的にヘリックス構造を形成領域の立体構造解析・動的構造解析をNMRで行う.同時に,NOE/SAXS/PRE/RDCなどマルチモーダルなアプローチを駆使してCPSF6-HBc複合体構造を明らかにする. Halo-tag CPSF6遺伝子を細胞内に外部から導入して,核内で顆粒形成しHBcとの局在るす実験条件を確立し,光照射による核内顆粒内部でのCPSF6と近接するタンパク質の変化を追跡する実験系を確立. in situ hybridizationにより,B型肝炎ウイルスのゲノムとなるpgRNAがCPSF6の核内顆粒体にHBcと共に局在することを検出する.このことにより,CPSF6の顆粒形成がB型肝炎ウイルスの複製課程に関与することを明らかにする.
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