研究課題/領域番号 |
23H02441
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森下 英晃 九州大学, 医学研究院, 教授 (90783499)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 液滴 / 選択的オートファジー / 肝細胞 / 細胞質 / 定量的プロテオミクス |
研究実績の概要 |
細胞内における液-液相分離現象とは、ある特定のタンパク質・生体分子からなる「液滴」が細胞内に生じる現象であり、細胞の機能制御に重要な役割を担っている。選択的オートファジーはそれらの液滴の分解を担う代表的な細胞内分解機構である。しかし、その生理的意義はほとんど不明である。本研究では細胞内恒常性維持に必須なSQSTM1液滴をモデルとして、それらの液滴を標的とした選択的オートファジーの生理機能を解明することを目的としている。本年度はまず、細胞破砕液の調整条件やセルソーター(ソニーSH800S)を用いた液滴ソーティングの条件に関して、さまざまな組み合わせを検討した。本解析では、細胞質中に多数の巨大な液滴(各種肝疾患において出現するマロリー・デンク体に類似した構造と考えられている)を自発的に形成することが知られている肝細胞がん由来の細胞を用いた。顕微鏡およびウェスタンブロッティング解析によりソートした液滴の形態学的解析を行った。その結果、液滴をセルソーターで回収する最適な条件を確立した。さらに液滴の流動性を低下させることで液滴を高効率に精製できることを確認し、その最適条件を検討した。液滴を構成するタンパク質群を決定するため、高感度な質量分析計(Thermo Orbitrap Eclipse)を用いた定量的プロテオミクス解析を実施した。その結果、複数の新規液滴局在基質を同定できている。一部の新規因子に関して、それらの各種ストレス下での局在や分解の程度を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたヒト細胞を用いた新規液滴構成因子同定法の確立に関して、最適条件を見出し、さらに定量的プロテオミクスを用いて複数の新規液滴構成因子も同定できていることから、本プロジェクトはおおむね順調に進展しているといえる。液滴構成因子の機能やそれらの分解の生理的意義に関する実験系の立ち上げにも順調に着手できており、本プロジェクトの研究基盤を確実に整備できている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト細胞を用いて同定した新規液滴構成因子の局在、機能、分解の意義を検証するための実験系の構築を進める予定である。具体的には各種検出プローブの条件を検討することで、微量の構成因子を高感度に解析できる実験系を構築する。
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